ひと回り大きくコンパクトから脱皮した新型A3の独自の世界
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デザイン的な密度はやや薄れたものの、新しいA3の外観は全体に品質感を感じさせます。これはボディパネルの合わせ目などが、国産車に匹敵するくらいに詰められ、きれいに仕上がっているのが理由です。またインテリア回りの品質感も従来のレベルを維持しています。やや気になるのは、ここ数年、各自動車メーカーがアウディの品質をターゲットに開発を進め、その差が急速に小さくなっていることです。アウディA3には一段の品質アップを期待したいところでしたが、必ずしもそうはなっていません。
というか、今回のアウディA3を見ると、アウディの進む方向性が変わってきたようにも思えます。これまでのハイクォリティ路線から、ややスポーティ路線へと舵を切ったかのように思えるからです。ハイクォリティ路線はフェートンやトゥワレグ、パサートW8などを投入したグループ企業のVWも追求しているところであり、それとの差別化もあってアウディはスポーツ志向を強めているように見えるのです。
直噴エンジンは力強さ示すが走行中にストール感の発生も
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2000ccの直噴エンジンは、それなりのトルク感があって、力強さを感じさせてくれます。アウディの直噴エンジンはルマン24時間レースでその性能が実証されていますが、その技術のフィードバックを受けて良いエンジンに仕上がっています。ただ、6速のティプトロニックATとの組み合わせによるものなのか、エンジンそのものに由来するものなのか分かりませんが、走行中にしばしばトルクストールを起こしたかのようになることがありました。上りの坂道の途中に交差点などがあって一瞬アクセルを緩めたときなど、エンジンの回転が落ちるとアクセルを踏み込んでもなかなか回転が上がっていかないのです。エンストを起こすワケではないので、そのうちに復活して走り出すのですが、しばらく無反応状態が続くのはおかしな設定です。V型6気筒の3200ccエンジンとDSGとの組み合わせではそうした感じにはならなかったので、2000ccエンジンと6速ティプトロの組み合わせだけの問題かと思われます。
そのV型6気筒3200ccエンジンは4WDのクワトロと合わせて採用されるため、車両重量は200kg以上も増えて1600kgを超えます。それでも圧倒的なパフォーマンスを発揮する大排気量エンジンですので、A3のボディを豪快に走らせることがきます。通常はATと変わらない感覚で運転でき、必要に応じてティプトロのようなマニュアル車感覚の走りが可能なダイレクト・シフト・ギアボックスも、実に優れたスポーティフィールを感じさせてくれました。
一般のユーザーにはベースのA3がお勧めグレードとなる
さて、アウディA3の価格ですが、ボディや排気量がアップしたこともあって、価格も高くなっています。ベースのA3は299.5万円とわずかに300万円を切りますが、スポルトは330万円の設定で、クワトロの価格は実に437.5万円に達します。クワトロに関しては、A3のシリーズの一部というより、別のスポーツモデルと考えたほうが良いでしょう。
標準とスポルトの30万円ほどの価格差は、まず16インチと17インチのタイヤ+アルミホイールの価格差があります。当然サスペンションも専用チューンのスポーツサスペンションになっています。ほかにもスポルトのシートは部分本革のスポーツシートになり、フロントに電動式のランバーサポートが装備されます。このほかステアリングやパーキングブレーキレバーが本革巻きになり、自動防眩ミラーやオートライトなどが装備されています。これで30万円の価格差というのは、まあ納得できるところです。どちらを選ぶかはユーザーの好みにで考えたら良いと思います。
ワインディングでの走りを楽しみたいタイプのユーザーなら断然スポルトですが、街中を中心にたまに高速道路使って長距離ドライブをするような使い方なら、標準のA3で十分です。これにカーナビを含めたマルチメディアステーションや好みに応じてウッドパネルなどをオプションで装着すればいいでしょう。ほかにもいくつかのオプションが用意されていますが、ここまでの仕様でも諸費用を含めた支払い総額が300万円台の後半に達します。オプションは必要性を考えて厳選して装着するといいでしょう。