日産自動車が、期間限定(2006年6月1日~9月30日)で「+CONRAN(プラスコンラン)」という特別仕様車をリリースしました。「コンラン」とは、住宅やショップのデザインを手がける英国のデザイングループ、CONRANのこと。対象モデルはマーチ、ラフェスタ、キューブの3車種。デザイン好きから見れば「なぜコンランがクルマを手がけたのか?」と思うだろうし、クルマ好きは「どうしてマーチ、キューブといったコンパクトカーなのか?」と考えるはず。とにかく「?」だらけの特別仕様車になっています。
そういった読者の「?」を解決するために、ふたりのガイドが立ち上がりました。「女性と子供のカーライフ」ガイドの森山みずほと「デザイナーズファニチャー」ガイドの石川 尚氏の両氏が日産のデザイナーにインタビュー。「+CONRAN(プラスコンラン)」に対する「?」を解き明かしてきました。
コラボインタビュー!石川 尚さんの記事『気になる+CONRAN(プラスコンラン)』
なぜ日産は、コンランをパートナーにしたのか?
ラフェスタの+CONRAN。ボディカラーもオリジナルカラー |
それもそのはずで、今までにいくつか存在した“○○バージョン”といったものは、ほとんどがタイアップメーカーのエンブレムが貼られ、あとはフロアマットにちょっとロゴが入ったお買い得仕様車でしかなかったから。
でも、このコンランはそんな単なるロゴを貼り付けたモデルとは違い、クルマ業界としては初と言えるほど真剣なデザインコラボレーションモデルになっているのです。
というわけで注目した今回の「+CONRAN(プラスコンラン)」。コンランって何よ? という紹介は御一緒させていただいたAll About「デザイナーズファニチャー」ガイドの石川 尚さんにまかせ、ここではまず、なぜ日産がコンランをパートナーとして選んだのか? を日産の「+CONRAN(プラスコンラン)」担当デザイナーの吉富 京さんにお話をうかがってみました。
吉富氏(以下・吉と省略)「そもそものキッカケは、日産がロンドンに新たなデザインセンターを設立した際に、そのオープニングパーティのデザインコーディネイトをコンランに依頼したところから始まります。この時、現行キューブのコンセプトモデルを展示していたのですが、そのキューブのユニークなデザインをとてもコンランが気に入ってくれて“一緒に何かできないかな”という話になったんです。実は新型キューブの斬新なデザインは、奇抜すぎてユーザーに受け入れてもらえないのでは……という不安も少しありました。でもコンランが本当にキューブのデザインを気に入ってくれ“これはイイ”と太鼓判を押してくれたんですね。それがとても自信となりました」
石川氏(以下・石と省略)「なるほど。でもなぜオープニングパーティのデザインをコンランに依頼したのですか?」
吉「当時は日産がインテリアデザインに力を入れはじめた時期でもあり、コンランのモダンで心地よいインテリアは、日産の目指す方向と同じものがあり注目していました。しかもロンドンでの……ということもあり英国デザインで著名なコンランに依頼したわけです」
森山(以下・森と省略)「そうやって経緯をおうかがいし、改めてそれぞれのデザインを見直すと、確かにコンランと今の日産のデザインとは通ずるものがありますね。
あえてタウンカーを選んだのは、理由がある
森「では、いざ一緒にデザインをしよう……となった時に、なぜキューブを初めとしたタウンカーでスタートしたのですか? コンランを知っている人にとっては「もう少し高級モデルでやってもよかったのに」という声も聞くのですが」吉「先にも言ったように、まずキューブを気に入ってくれたということがあります。と同時にコンランのデザインポリシーが日産のタウンカーとマッチしたということもありますね」
2003年の東京モーターショーでコンセプトカーとして初めてコンランとのコラボモデルが登場。この時の反響がすごく翌年の5月に「キューブ プラス コンラン」「キューブ キュービック プラス コンラン」を限定発売。2週間で予約が生産計画台数(1,000台)に達し完売してしまい注目を集めた |
石「そうね。コンランは“日常”をキーワードにしているからね。あくまでも日常で使う道具なんだけど、それをより綺麗に、ハイクオリティにして生活を豊かに楽しくするというスタンスだから。僕は今日、初めてこの+CONRANを見たんだけど、デザインもそうだけどキューブやマーチで展開しているところが、すごくコンランらしいなぁって思ったね」
森「私なんてデザインに関してはシロウトですから、単純にストライプのルーフやモダンな花柄がコンランっぽくてオシャレだなぁと感動していたのですが、ファニチャーデザイナーのプロから見ても、やはりコンランらしさは感じますか?」
石「うん、色の使い方とか素材感とかね」
森「ちなみにデザイン自体は日産側でやられたのですか?」
吉「はい、基本的には日産が手がけましたが、スタート時はコンランから様々なコーディネイトの提案をいただき、そのコーディネイトをベースに日産がカーデザインのノウハウを元に具現化していったという感じですね。だから本当に半々というか一緒にデザインしたという感じです。かなりのディスカッションも重ね、どういうユーザーにどう受け入れられたいかという点にはお互い力を注ぎましたね。だからイギリスにも何度も足を運びましたし」