最近では、プジョーがその経験の長さを生かし、ヨーロッパ・フォードとエンジンを共同開発・生産している。もちろんこれは、グループ内のシトロエンにも積まれている。一方ルノーと日産は、今後のエンジン開発について、ディーゼルはルノー、ガソリンは日産が担当するということを決めたという。
そういえば日本でも、70~80年代には次々にディーゼル乗用車が登場し、ちょっとしたブームになった。それが、北海道など限られた地方以外では急激に減ってしまったのは、どうしてなのか。僕は理由のひとつに、「クルマに何を求めるか」の違いがあると思っている。
ディーゼルは燃費が良く、信頼性や耐久性でも有利だ。逆に騒音や振動はガソリンのほうが少ない。昔は性能にも差があった。で、クルマを道具として割り切れるフランス人は、多少うるさくても燃費が良くて故障しにくいディーゼルを選んだ。一方、長い間自動車をステイタスシンボルとして見てきた日本人は、オイルショックが一段落すると、速くて快適なガソリンに戻った。
こうなると当然、技術の進歩にも差が出てくる。メーカーはターボや直噴、コモンレールといったテクノロジーをどんどん導入して、高性能で騒音、振動が少なく、有害排出ガスの少ないエンジンにしていった。最近ではプジョー607が、世界で初めてDPF(黒煙の発生を抑える微粒子フィルター)をメーカー装着している。そして石油会社も、黒煙が出にくい低硫黄の軽油を開発していった。これでますます人気が出てきた。
ところが日本は、基本的に昔のまま。とくに軽油は、トラック輸送を安く抑えたいという国の方針で、コストを優先して、黒煙が出やすい軽油をそのまま売り続けていた。ディーゼルが悪者になってしまったいちばんの原因は、ここにあると思う。最近になってようやく低硫黄の軽油が出始めたが、これは東京都のディーゼル規制で、そうしなければならなくなったため。国に先がけてクリーン化を進めた石原都知事は、評価できると思う。