輸入車/注目の輸入車試乗レポート

仏風原付自転車・ソレックス(2ページ目)

戦後まもなくフランスで生まれた原動機付き自転車ソレックス。前輪の上にエンジンを乗せて走らせる超原始的乗り物は、21世紀の日本でも使い物になるのだろうか? 1年間付き合ってみた。

執筆者:森口 将之

慣れるまでは大変だった。エンジンを密着させたままペダルだけで走るのはけっこうな脚力を必要とするし、冷えているときはなかなか始動してはくれない。無事にエンジンが掛かっても安心できない。パワーがたったの0.79PSしかないからだ。上り坂にかかるとどんどん速度が落ちていく。しかたなく再びペダルに力を込めて、スピードをキープしなければならない。電動アシスト自転車ならぬ人力アシスト二輪車だ。


最高速度は平坦地でも30km/h程度。原付の制限速度と同じなのでスピード違反の心配はないが、大通りをクルマに混じって走るのはかなり怖い。そのため気がつくとクルマの通らない細い道を探し、そこを使って目的地まで行くようになった。けもの道という言葉があるが、こちらはさしずめソレックス道である。

ほかにも錆が出やすいとか、ネジの山や頭が弱いなど、気をつけなければならないことはたくさんある。ただし速さについては、エンジンにアタリが付いてきたことに加え、添加剤を買ってきて入れたことが功を奏したのか、以前はエンジンだけでは登れなかった坂で加速するほどに成長している。パワーのない乗り物は速さの違いがすぐに体感できるからおもしろい。


移動の道具としてはあまり使い物にならないソレックスだが、1年以上乗り続けられたのは、とにかく楽しいからだ。とことん原始的で、ときにはペダルを漕がないと走ってくれないという非力さが、逆に動いていることの喜びを実感させてくれる。以前僕はシトロエン2CVという、四輪車の世界では1、2を争う遅いクルマに乗っていたことがあるが、ソレックスはまさに二輪版2CVだ。
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