第2次世界大戦後、敗戦国となったドイツやイタリアで、キャビンスクーターと呼ばれるクルマが数多く生まれたのを知っている人も多いだろう。FMRメッサーシュミットやBMWイセッタなどがその代表だ。オートサンダルやニッケイタローといった日本の初期の軽自動車も、内容的には似ている。
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その後キャビンスクーターは、人々の生活水準の向上に伴って衰退していくが、完全に消滅してしまったわけではなかった。しかもドイツやイタリアだけでなく、イギリスやフランスにも存在していた。そのうちフランスに住む同類が、1973年のオイルショックを境に一気に増えた。これがクワドリシクル(4輪自転車)だ。
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その後排気量の制限が拡大され、現在は免許なしで乗れるのは400ccまでとなり、それ以上のクラスは500ccが主流となった。ただし免許なしの最高速度制限は45km/hのままだ。エンジンは単気筒だけでなく2気筒も登場し、ほとんどは燃費の良いディーゼルになっている。つまりスクーター用から汎用エンジンにスイッチしたわけで、なんと日本のクボタ製が多く使われている。
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クワドリシクルは維持費は安くすむが、車両価格は決してリーズナブルではない。たとえばエクサム300/400は7600~10500ユーロで、ルノー・トゥインゴの廉価モデルとほとんど変わらないのだ。ではどうして売れるのかというと、免許がなくても乗れるから。それも若者ではなく、年配のユーザーが多い。年齢的に新たに免許を取るのが難しい人たちの近所の足代わりとして使われているのだ。