そのニュースが届いたのは3月16日の昼頃だった。まずはインターネットのニュースサイトで、PSA(プジョー・シトロエングループ)がトヨタ自動車と、ヨーロッパ向け小型車の開発・生産で協力を検討していることが明らかになったと報じられた。そして同じ日の新聞の夕刊にも、このニュースは取り上げられていた。

トヨタはすでにGMとの間で共同開発・生産車を発表しているし、フォルクスワーゲン(VW)との間でも日本での販売などで手を結んでいる。もしPSAとの関係が実現したとしても、こうした関係がひとつ増えるだけにすぎないということで、たいしたことではないのかもしれない。トヨタの小型車部門であるはずのダイハツにとっては持ち場を取られたようでさびしい話ではあるが。

今回の話し合いは、このディーゼルエンジン供給の関係から発展したものといわれているが、もし実現すれば、PSAがヨーロッパ以外のメーカーと乗用車の共同開発・生産を行うというのは初めてとなる。そうなれば大ニュースだろう。何せフランスに現存する2つの自動車会社が、2つとも日本のメーカーと手を結ぶことになるのだから。
ただし資本提携にまで発展するかというのは疑問。たしかにトヨタはPSAのクルマづくりを高く評価していて、エンジニアと話しても好きなクルマとして必ずプジョーの名前が出てくるほど。でも彼らは経営面では独自路線でいく考えが強い。現にGMやVWとも資本提携は結んでいない。それに違う企業グループ同士の業務提携はよくあること。日本でもマツダがスズキの軽自動車をOEM供給してもらっているし、ヨーロッパではルノーとオペルが小型商用車の共同開発・生産を始めたばかり。業務提携=合併ではないのだ。
でもフランス車好きのひとりとして言わせてもらえれば、この話し合いが合意に達して、その後も両者の関係が親密になってくれればいいと思っている。ちょうどルノーと日産のように。プジョーやシトロエンの個性が薄れるかもしれないという考えもあるかもしれないが、全体的に見れば、より多くの人にフランス車の良さが分かってもらえると思うからだ。