スパルタンな仕事場に腰を落とす。プレクシグラスのフロントウィンドウが顔面に迫り、異様な風景を映し出した。”アンディアーモ!(さあ、行こうか)” テストドライバーの掛け声とともに、V12気筒の轟音が体全体を包み込む。
身も震えるような爆発音とともにロケットスタートだ。すさまじい加速、息つくひまもないシフトアップ、後頭部をぶちのめす爆音。すべてに圧倒されながらもゆがんだ前方をみやると、モデナの細い農道が針のように見えてきた。
200km/hを超えたであろうか。そのスピードに恐怖を覚え始めたとき、1台のトラックが姿を現した。危ない!フルブレーキングとともに上体が一瞬フロントガラス方向に引っ張られたと思いきや、地面に吸い付くように引き
戻される。ソリッドでダイレクトなブレーキ。同乗でもその効き具合が手にとるように感じられる。
地面をまるでコーヒーカップのように滑らかなにかつ鷲づかみにしながら農道の狭いコーナーを抜けていく。ドライバーいわく、”イージートゥハンドル”つまり、運転が簡単だ、と。
21世紀にちなんで、21台の限定生産。値段も21億リラ(約1.3億円)と桁外れ。しかし、この比類なきパフォーマンスと並び立つもののない個性的なデザインを目の当たりにすれば、ランボルギーニの新型もフェラーリの60周年記念モデルもまるでモデナの煙風のようにかすむであろう。
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