ニュルブルクリンク・ノルドシェライフェ。自動車開発の聖地であるその場所で、インプレッサWRX・STiスペックCのプロトタイプをテストすることができた。
僕自身もインプレッサでここを走るのは2回目だが、走らせてすぐにその進化には改めて驚かされた。月並みな表現だが、ニュルで磨かれてきた最新のインプレッサは、最良のインプレッサだった。
皆さんもご存じのように、ノルドシェライフェはマシンにもドライバーにも相当に厳しい。まだ100周の半分程度しかここを周回したことのない僕にとっては、まさに走らせること自体、精一杯の場所である。しかしそれでもインプレッサは、そんな僕にすら進化を明らかに感じさせてくれたのだから、いかに大幅なステップアップをしたか分かる。
事実これまでのスペックCに対し、今回のプロトタイプでは実に多くの変更・改良がなされているのである。
まず感じたのは、ステアリング・フィールが激変していたこと。一言で言えばそこには、これまでのインプレッサにはなかった上質さが加わったといえる。
理由はステアリング・ギアボックスを、新型レガシィと同じキャノンマウントとしたからである。ステアリング・ギアボックスにブッシュを直接圧入するそれは、取り付け剛性が高まり、横方向の曲げに対して効果を発揮する。これにより今までなかったしっとり感まで伴う。同時にステアリングの適度な重みや手応えと、増した情報量によって、積極的に舵を入れていけるようになった。これは非常に大きな進歩。これならそれこそ街中レベルから、極めて優れた操舵感を得られ、操っている実感も高いといえる。
次に感じたのは乗り心地性能が向上していたことである。スペックCというモデルは、高い動力性能や運動性能と引き替えにコンフォート性能を無視していた感があったが、プロトタイプに乗るとこれなら普段乗りも我慢できる最低限の乗り心地を得たといえる。基本的に路面変化を拾って身体に伝える突き上げは残るが、それ自体が丸みのあるものとなったのだから嬉しいところだ。
理由はタイヤの変更が大きいのだという。ホイールリム径を7.5Jから8Jへと拡大したBBS社製の鍛造17インチアルミホイールに組み合わせられるポテンザRE070タイヤは、今回から235mm幅となった。これでもちろん性能アップを果たしたわけだが、同時にタイヤの縦バネが柔らかくなったことでコンフォート性能がアップしたのだという。