Zはようやくスポーツカーになった。私はZロードスターに乗って、強くそう感じた。
理由は2つで、まずオープンボディを採用したこと。もう1つはサスペンションが改められたことによる。
ロードスター化によるオープンボディの採用で、車重は約100kg重くなった。これは電動式の幌を採用したことや70kgにも及ぶ補剛を施した結果である。車両重量の増加は絶対的にネガティブであるし、例え補剛を行ってもやはりクーペに比べれば剛性は落ちてしまう。しかしそれはZロードスターでは、ある意味ポジティブな要素となったのだ。
クーペに対して剛性が低下したことで、タイヤ-サスペンション-ボディと伝わる入力が、ロードスターの場合は上手い具合に逃げ場を持ったように思える。そして約100kgの重量増は、2つめの理由であるサスペンションが改められたことと相まって、ロードスターにクルマの動きを与えた。
Zのサスペンションは、欧州での販売に合わせてセッティングが変更されている。これはもちろんクーペにおいて。つまりこれまでの北米の要求そのままだったガチガチのサスは、ニュルブルクリンクやその他オープンロードを走った結果NGとなったのである。具体的には以前よりもしなやかに感じられるものとなった。これにより乗り心地も向上した。
ロードスターのサスペンションは、クーペと同じである。普通ならば車両重量の増加分とオープンによる剛性低下を考えて、より適切なものを与えるのだろうが、Zロードスターではクーペと同等とされているのだという。
このサスペンションがZロードスターの重く剛性の低いボディと組み合わせられることで、いい具合に「肩から力が抜けた」のだ。
事実走らせるとそれを痛感する。路面からの入力を上手い具合に逃がしていなすことで、クーペにはない走りのライブ感が増している。
いや正確には、クルマの運動がようやく少しだけ分かるようになったという方が正しいだろう。特にマイチェン前のクーペはボディ剛性の高さに加えサスペンションのハードさが相乗効果となり、良くも悪くもダイレクト感のみの乗り味だった。入力は逃げ場を失うことでボディはもちろんドライバーの身体をも揺すり、同時に操作に対する反応も一瞬のうちに終わることで走らせている実感が得にくかった。速くて曲がるが、ドライバーは結果を知るのみで肝心なプロセスを味わえずにいた。これが以前のクーペだ。