話は一気に方向転換するが、このZ4、なんといってもスタイリングがいい! まず見た目でかなり強い印象を与えてくれる。クリス・バングルのデザインによるそれは、まさにフレイム(炎)を感じさせるもの。エッヂの際だたせ方と、ボディパネルごとに与えられた凹面凸面が、実に見事な存在感を発揮している。ボディを構成するラインだけを見れば、それは相当吟味された無機質なものであるのに、ラインとラインをつなぐ面が部分によって凹凸を織りなしているため、全体としては非常に「活きた」感じを伝えてくる。7シリーズから始まったこの流れは、このZ4で確立され、さらに今後登場予定の5シリーズで昇華した、という感じすら受ける。
一方インテリアは、極めてシンプルな印象を受けた。一つの塊から削り出されたような造形を持つインパネ中段と、そこに与えられた分かりやすく操作しやすいスイッチ類。その他のボタン式スイッチも極力シンプルに配されており、エクステリアとは対照的にとてもスッキリした感じを受けるのだ。人によっては価格に見合った華がないと感じるだろうが、個人的にはそのシンプルさは今時返って新鮮なものとして目に映ったのだった。
屋根を開ける。嬉しいのは、このクラスとしては異例のフル電動オープントップを備えていること(3.0iに標準で2.5iはオプション)。ボタンを押すだけで約10秒もまてば、すぐにオープンエアを満喫できる準備が整う。この速さならば信号待ちでも問題なく開閉ができるレベルだ。このクラスのオープンモデルの場合、電動式はあってもほとんどが手動のロックを解除する操作が要求される。それらと比べると、フル電動はやはり便利でありがたい装備だ。
現代のオープン2シーターの世界というのは、マツダが89年に送り出したユーノス・ロードスターに端を発している。このクルマの世界的な成功がきっかけとなって、BMWがZ3を、ポルシェがボクスターを、といった具合で、その他の自動車メーカーも次々にオープン2シーターを投入してきた。しかしあれから10年以上が経った今、このセグメントにおける明暗はクッキリと分かれたと言えるだろう。
ロードスターは2代目となり、現在日本では販売に苦戦しているものの、世界で見ればやはり成功したモデルであることに間違いはない。そしてユーノスの影響を少なからず受けて登場したポルシェ・ボクスターは、ポルシェ社を見事復活させる原動力となった。果たしてBMWが送り出したZ3は、世界的にヒットし、日本でも多くを見ることが出来る。
このクルマがファーストBMWである人も多いといえるほど、BMWを浸透させた感すらある。そして今、そのZ3の成功を受け、1クラス上のモデルへと成長を果たしたZ4が登場した。このクルマを実際に走らせてみると、まさにイマドキの理想的な走りを持ったオープン2シータースポーツに仕上がっていたのである。ユーノス・ロードスターに続いたオープン2シーターは数多いが、今ではわずか数えるほどのモデルが、その地位を確立し、定番となった感がある。そして今後のこのセグメントの展望を考えると、やはり今回試乗したZ4というのは数少ない主役として、高い位置にあるといえるのである。
Z4試乗PART1はコチラ