さて、例のシフトレバーである。これは表現が実に難しい部分。というのもまず、旧型よりは確実に好ましい感触を持つ。旧型はレバーも長く位置もやや遠く、操作感は意外にクニャっとしていた。そこからすると全ての面で上回っている。ただし同じ6速MTを持ちながらもフロアにシフトが置かれるインテRと比べるとどうかというと、シフトレバーを操作し、レバーがゲートに入るカッチリした感触の高さではインテRにかなわない。シフトストロークそのものはシビック・タイプRの方が極めて短いわけだが、その分シフトした時の手応えを味わう暇がない。アッという間に操作が完了してしまうのだ。
ここがややこしい部分で、まさにアッという間の操作で済むだけに、シフトの操作性自体は明らかにシビック・タイプRのそれが優れている。さらにこのシフトは実際に走らせた時に実に絶妙な位置にあると分かる。ステアリングから手を離してスグの位置にあるので、シフト操作そのものをほとんど意識することがない。これはかなり新しい感覚ともいえる。インパネシフトをまとめてみると、旧型よりは操作性/操作感ともに断然良い。が操作感で言えばインテR、操作性で言えばシビックRという感じだろう。
スムーズなユニットと、誰でも可能な電光石火のシフティングにより、新型シビック・タイプRはクールに速さを実現している感じがある。ギアレシオも2速から3速の間で「待ち」を感じた旧型に比べれば、1段ギアが増えたことで適切なステップ比が与えられるから、実にすんなりと(もちろん元気良く)加速していく感がある。当然タイプRならではの「熱さ」ははらんでいるものの、旧型比では何か爽やかで、スマートな感じの気持ちよさがある。これはエンジンそのものが洗練されていることも関係しているだろう。
これに対して旧型が持つ速さはまたひと味違ったものである。ギアレシオこそ快感を削ぐ感があるが、それ以外は全てがリアルだ。一言で言えば「熱さ」に溢れている。エンジンの脈動を感じながら、回転の高まりに自分のハートの高ぶりをシンクロさせて旧型は加速していく。何か全てをさらけ出しながら……という感じすらあるのだ。