ではまず走りを比較する前に、目に見えて違いが分かる部分である内外装について比較しておこう。
基本的なパッケージングにおいて、世紀をまたぐ差があることからも分かるように、そのフォルムは大きく異なる。特に異なるのは新型が室内空間拡大のために得た背の高さ。これが2台のフォルムを大きく異ならせている最大の理由だろう。
参考までにディメンジョンを記すと、全長ではなんと新型の方が50mmも短い。全幅は同じ1695mm、だが全高は実に70mmも高くなっている。相対的にみて旧型は全高が低いわけだが、それは見た目において相当に大きな違いを生んでいるといえる。
そしてここに個人的な意見を挟むと、旧型の持つその低さは、素直に魅力的なものに思える。スポーツを極めたタイプRの名を持つマシンに相応しいフォルムだ。しかし一方で新型のそれもまた別の意味で魅力的だ。日本ではこのタイプR登場までシビックには5ドアしか存在しなかっただけに、良い意味での大きなギャップが感じられて好ましい。かつキャビンフォワードを取る独特の背高フォルムは、未来性とスポーツ性を融合した新たなカタチとして大きな存在感を感じる。さらにディテールにおいては、旧型と比べ大分空力などを意識していることが見た目としても伝わってくる。個人的には新インテRよりカッコは気に入った。
インテリアそのものにおいては、使われる素材の質感が大幅にアップしていることが大きな違いだ。新型も雰囲気はタイプRそのものだが、ダッシュボードやインパネ、ステアリングの質感は大幅に向上した。ただし、旧型のブラックで統一されたスパルタンなそれもやはり魅力的である。
さらにドライビング・ポジションにまで言及すると、全高の低い旧型は着座位置も低く、いかにもスポーツ性の高いマシンに乗っている感が強い。対して新型はアップライト気味の姿勢となるだけに、座った感じのスポーツ度は薄めだ。この辺りはインテRでも感じたが、やはり旧型は情感を大切にし、新型は機能を大切にした、という感じがある。
プラットフォームの世代が変わったことによるボディ剛性の差は、始動してわずかにマシンを走らせただけで分かる。始動時の振動は新型ではかなり少なく、クルマの走り出しもスムーズなものだ。もちろん単純にボディ剛性の差だけがそれを生み出すわけではないが、いかにも剛性の高いボディにエンジンがマウントされている感じが伝わり、わずかな動き出しで既にカッチリした感じも伝わる。
インテRでも感じたことだが、走り出して間もなく、旧型では感じられた機械から伝わるがさつな部分が消えていると分かる。比べると旧型はエンジンそのものやドライブシャフトなどのゴロッとした回転感が伝わるが、新型ではごくわずかでスムーズだ。
そしてインテRと同様のK20A型ユニットが、いかに洗練された現代のエンジンかということが分かる。静粛性も高く、不快なものをほとんど伝えてこない感がある。
だからこそ旧型に搭載されていたB16B98スペックRのややもすれば粗野ともいえる部分が輝いているようにも感じるのだ。K20A型に比べれば、明らかに振動も騒音も大きい。しかし、その分B16B98スペックRは、全てを伝えるエンジンでもある。
だから体感的には、B16B98スペックRの方が随分とドラマチックなものに思える。良いところも悪いところも全てひっくるめて、持ちうる全てをドライバーに伝える。かつVTECの切り替わりの大胆さは、エグゾーストから発せられるサウンドとともに心に響く。 それからするとK20Aは、あくまでマジメに仕事をしてスムーズな吹け上がりを実現するといったところか。VTECの切り替わりもほぼ感じられない。
ただし、約400CCものアドバンテージを伴いながら着実に仕事をしており、その間に大きなトルクをたっぷり発生するから、実質的な速さは当然こちらが上となる。しかも、決して気持ちよくないわけではないからにくい。というよりもむしろ、現代のスポーツエンジンとして考えた時に、比べられるものは極めて少ないといえるほどの快感すらある。
インテRに比べると、シビック・タイプRは5ps/0.4kgmだけ性能が劣るわけだが、これはシビックのリアオーバーハングがインテRより短いために、排気系の取り回しが異なり、その分性能が落ちているのだという。しかし実質的な差があるのかというと、体感ではその違いを見出すことはできなかった。つまり体感上での性能は互角なのだ。