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“小さな巨人”iQが、時流を変える!(2ページ目)

グッドデザイン大賞に引き続き、先般日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞したトヨタ・iQ。 全長3mにも満たないこのクルマ、果たしてどうやら自動車界に大きなうねりをもたらす“小さな巨人”となりそうです。

三代 やよい

執筆者:三代 やよい

車ガイド

レクサスLSの半分

iQ
実際に道で出会うと、その小ささがより際立つiQ。こんなコンパクトカーが街に溢れる様子を想像するだけでも、なんとなく楽しい気持ちになりませんか

今回プレス向けに実施された試乗会の基地となったのは、外苑前にある「セラン」というレストラン。美しく色づいた並木道を進んでいくと、既に報道陣が試乗するiQがそこかしこで小さなボディをちょこん、と佇ませています。ちょうど隣に並んで停まっているレクサス・LSと比べてみると、iQはまさにその半分。その駐車スペースに、iQを縦に並べてみれば優に2台は収まるのではないかというほどの小ささです。

初冬の淡い太陽光を浴びて、テラテラと光を返すボディの美しい表情も目を惹きます。巻貝や波紋などを基にして作られた数理モデルを用いたデザイン、とプレス資料に書いてあったものの、いまいちピンときていなかったのですが、一目実車を見れば一目瞭然。大胆なキャラクターラインを1本筆で引いたデザインではなく、自然界にそこかしこに溢れているような、何気ないけれどもしっかり主張する“動”の質感を主張しています。アヴァンギャルドな欧州車的デザインがピカソの抽象画とすれば、iQはリアルな風景画に例えることができるかもしれません。

一昔前のクルマのような・・・・・・

トヨタiQ・インパネ
助手席の足元部分が大きくえぐられているのがお分かりになりますか? 身長160センチの筆者が乗ると、こころもとないくらいに広々として感じられました
いざ乗り込んでみると、前席に座っている限りは、まさかこれがさっき道にちょこんと佇んでいたあのマイクロカーだとは思えないほど。運転席からの視界はもちろん、助手席に座ってみれば、足元の広大なスペースはヘタなセダンもおよびもつかないほどの広さ。今のようにゴテゴテと色々なモノに占拠されている現代カーから、ちょっと昔のクルマに乗りかえてみると存外「広いなあ」と感じることがあると思いますが、まさにあの感覚です。

ほんの一時間弱の試乗でしたが、とりもなおさず感じられたのはストレスの無さ。アクセルを踏み込めばスーッと滑るように走り出し、CVTもエンジンもことさらに自身の存在感を主張せず、街中を走っている限りは静粛性も高い。小さなボディにありそうな「ぴょこん、ぴょこん」という不安定な挙動も無く、常にフラットでジェントルな走り心地を提供してくれます。自動車専門誌的にいえば、すなわち「エンジンとトランスミッションのマッチング」、そして「フラット感」に秀でたクルマといえます。超小型車と思えないのは、室内空間の広さだけでなく、走りも然り、だったわけです。


「デカい=偉い」の壁を打ち崩す

トヨタiQ・レイアウト
助手席側の前方スペースが大きい非対称インストルメントパネルを採用。さらに、助手席スライド量を290mm確保し、薄型シートバックを用いることで後部乗員のニースペースをできる限り作り出しています
iQは、知れば知るほど、乗れば乗るほど奥の深いクルマです。小さな巨人にはまだまだヒミツがたくさん詰まっているよう。今回はその氷山の一角しかご紹介できませんでしたが、引き続き、コンパクトカーガイドとしてはこのクルマをしつこく追いかけていくつもりです。

デカいことが偉かったり、速いことがスゴかったり。ここ数年の自動車界で、誰もが「それで本当にいいの?」と首をかしげつつも打ち崩せなかったその高い壁を、見事に崩す前衛となってくれそうなiQ。「小さいことがカッコいい」。そう胸を張っていえる世の中がもうすぐやってくるのではないかと思わせてくれるクルマです。前出の中嶋チーフエンジニアはこう言っています。「若者のクルマ離れ、なんてよく言われていますが、それは間違い。楽しいクルマが無ければ、そこから離れていくのは当然でしょう」。iQが街に溢れるころには、街にクルマ好きが増えているかもしれません。
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