独得の走行音
サードシートとラゲッジスペースの一部には35MPaの圧力である水素タンクが鎮座するが、ミニバンのプレマシーがベースなだけあって230Lの荷室スペースを確保している |
普通にDレンジに入れて、ブレーキを離すとスルスルと動き出す。発進時は基本的にバッテリーからの電力でモーターが駆動する。急発進やバッテリーの残量がなければエンジンが始動。クリープであれば静かだが、アクセルペダルを踏み込むと「ブロローン~」という音がする。水素を送り出す音だそうだが、かなり大きな音なので少々驚いた。パワー的にはおそらく街中でも不足はないだろう。最高出力は110Kwなので、ガソリンのプレマシーの111kw、151psと大差ない。なお、ロータリーエンジンで走る場合は80kWだというから、パワー不足だろうが止まってしまうこともないし、速度に乗れば巡航も無理はないはず。
さらに加速するとエンジンでの発電、バッテリーからも電気が供給されるが、狭い敷地でそこまでは体感できなかった。だが、ロータリーエンジンを積んでいるため、従来の内燃機関に近い走行フィーリングなのは間違いない。EV、FCVやハイブリッドカーのEVモードの違和感さえある静かさとは違う。減速時のエネルギーはバッテリーに還元される。停止時はアイドリングストップが基本で、バッテリー残量が少なければ充電のためアイドリングする。
試乗が待ち遠しい
シート下にはリチウムイオンバッテリーとガソリンタンクが積まれているものの、後席の着座性はガソリン・プレマシーと変わらないように感じた。5人乗車でも実用になる車内だ |
先述したロータリーエンジンを起用するわけだが、水素はガソリンの1/10以下で着火、つまり燃えやすいため異常燃焼しやすい。普通のレシプロエンジンだと、燃焼室と吸気室が同じであるため、排気弁が高熱にさらされる。異常燃焼の対策がレシプロエンジンの課題だが、燃焼室と吸気室がおむすび型で分かれているロータリーエンジンは、熱源となる排気弁がなく、異常燃焼のマネージメントがしやすいという大きなメリットがあるそう。低温度のまま吸気室へ水素を送ることで、異常燃焼を避けるわけだ。
水素ステーションなどのインフラや車両価格などのコスト面などから一般への市販化は、まだまだ遠い未来かもしれない。しかし、車両そのものの完成度は想像以上に高いし、エンジンを降ろせば水素EVに、充電機能を加えればプラグインハイブリッドになるという同システムは、次期エコカーの流れがどう変わっても対処できるという先見性も備えている。
「ミニバン・SUV」のメールマガジンの申込はこちらまで