開発に「お家の事情」が影響しすぎていた頃の話なのだが、その影は新型プレサージュにはない。ユーザー不在からユーザー中心へと開発姿勢は転換。使う人にとって何が重要なのか、その勘所を押さえたクルマが第一印象だった。
先代の問題点だった床面地上高は同クラスでも最小水準となり、スライドドアを採用しながら低いサイドシルとしたことによって乗降性も上級ミニバンでは最良となった。そして、床面高は室内高のゆとりに直接的に影響する。天井の圧迫感が少なく、セカンドシートでは前方やウインドウ越しの側方の見通しのよさもあって、なかなか開放的である。また、サードシートの座面はセカンドシートよりも若干高い程度に設定されるが、これも意外と圧迫感が少ない。サードシート座面を低くするとセカンドシート見越し視界が低下し閉鎖感を強まるのだが、プレサージュはセカンドシートをキャプテンシート仕様としたことや前方に広くなるウインドウの視界が十分な開放感を与えている。
もっともシートの座り心地はセカンドシートよりも1ランク低下。座り比べれば、クッションに腰がなく、サイズも小振りで安っぽい。それでも標準的な体格の男性が長時間過ごせるだけの居心地を確保。サードシートを取るか荷室を取るかという使い分けを前提にするステーションワゴン型ミニバンの場合、サードシートはスペースも座り心地も実用十分であれば御の字。プレサージュは多少の余裕があるのだから、何ら不満とする必要はない。同タイプでは立派にアドバンテージとして通用する。
なお、セカンドシートはマツダMPV同様に左側シートに横スライド機構(前後のスライドも可)を採用。キャプテンシートと右側にオフセットしたベンチシートの2形態を選べる。そしてMPVと大きく異なるのはベンチシートとした時に3人掛けが可能なこと。中央部の座り心地は誉められたものではないが、いさどいう時の保険として7名定員にこだわるドライバーには福音となる点だ。
付け加えるならば横スライド機構のレールはシートに組み込まれ、床面設置は前後スライドのレールのみとなっているので、サードシートのつま先スペースも十分にある。サードシートの居住性を配慮しているのも好感が持てる。
セカンド左シートのオフセット(ベンチ状態)はサードシートの乗降性向上の大きなメリットにもなるのだが、リモコンウォークイン機構も乗降性では大きな特徴的装備である。ステアリングコラム左横に設置されたスイッチを長押しするとセカンド左シートのバックレストが前に倒れ、シート全体が前にスライドする。使ってみた印象では、ちょっと大仰過ぎるのではないかとも思われたが、サードシートに乗る乗員はクルマに不慣れな人も多く、こういった気配りは意外と役に立ちそうだ。