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キュービック01 キューブ3の室内は使えるの!?

短い全長と経済的な小排気量エンジンに実用的なボディを組み合わせたハイト系スモール。その特徴を3列シートの採用で強化したのがキューブ・キュービックだ。

執筆者:川島 茂夫


キューブ3(キュービック)は、その名の通りキューブをベースに開発されている。ちょっと見にはフロントグリルなどの細部のデザイン以外はキューブと同じに見えるが、全長が17cm延長されている。ホイールベースも17cm大きくなっていることから分かるように、リヤオーバーハング延長のお手軽設計変更ではなく、キャビンのコアに当たる部分から大きくしているのだ。リヤオーバーハング延長でも有効室内長を大きくできるが、サードシート周りのホイールハウスの出っ張りが邪魔である。ホイールベースごと延長すれば、このハンデが少なくできる。

しかも、リヤドア幅も延長代に合わせて大きくなっている。セカンド&サードシートともに乗降性が向上。後席の使用頻度が高い車種ならではの親切設計である。スモール&コンパクトの3列シート車市場の拡大に合わせた間に合わせ設計ではなく、しっかりと使う人の現実を見据えた設計は好感が持てる。

ならば大人の6名乗車でもキュービックで十分、と考えるのは早とちりすぎる。頑張った設計だが、寸法的には使える限界レベル。サードシートはセカンドシートを膝前スペースがなくなるぎりぎりまで前方にセットして、何とかレッグスペースが確保できる。セカンドシート下のつま先が入るスペースも狭い。しかも、座面フロア高が高いため、膝を抱きかかえるような、よく言うところの「体育座り」の着座姿勢になってしまう。着座姿勢の自由度はほとんどないし、20、30分程度ならば我慢もできるが、長い距離は勘弁してもらいたい。

また、サードシート使用時の荷室容量も少ない。ハンドバックやブリーフケースなどの小さなバックが置ける程度。6名乗車でレジャーに出かければ身回り品も室内に置かなければならないのだ。

サードシートの格納はバックレスト前倒しで座面が連動して沈み込むワンタッチ式。ただし、ヘッドレストの着脱が必要である。左右一体収納を採用しているので、乗員数と積載量のアレンジ幅は狭い。セカンドシートは左右分割のダブルフォールディング方式を採用。サードシートと共に畳めば、フラットな床面の荷室が出来上がる。

同じくスモール&コンパクトクラスのミニバン、モビリオと比較すると、居住性では劣っている。モビリオも余裕のある方ではないが、サードシートもそれほど脚周りが窮屈ではない着座姿勢が採れる。姿勢の自由度も高い。腰がなく平面的で薄っぺらな着座感がないため、長時間座り続けるのが辛いという点ではモビリオのサードシートも同じなのだが、キュービックよりも多少はマシである。ただし、フロント/セカンドシートの乗り比べでは、シートの座り心地がしっかりしている分キュービックのほうが快適である。

シート格納時の荷室の使い勝手もモビリオが勝っている。乗員数/積載量のアレンジ幅も広い。ただ、シート格納の作業はキュービッグのほうが簡単。ヘッドレストの着脱こそ少し面倒だが、ふだんの用途でもちょこちょことシートアレンジを変える気にもなる。

居住性と荷室アレンジを総合的にみると、モビリオは6名乗車基準、キュービックは4名乗車基準になっている。キャビンの発想はモビリオが1BOX型、キュービックはステーションワゴン型なのだ。キューブ自体、フロントシート+多目的リヤスペースに近い発想のクルマであり、サードシートを付け加えたことでフロント/セカンドシート+多目的リヤスペースへと基準乗車人数を2名増えたと考えればいい。

端から多人数乗車が目的で選ぶドライバーにキュービックは不適当である。たまに6、7名で近場を移動することもあるが、ほとんどは2~4名乗車。でも、沢山に荷物あるいは大きな荷物を積むこともあるから、色々と使えるキャビンユーティリティが欲しい。そこに経済性や日常用途での取り回しのよさが加わって、「だからキュービックがいい」となるわけ。3列シート車の万能性を求める人には勧められないが、ワゴンや2BOXでも事足りるが、もっと便利に楽に使えるクルマを求める人向けのキャビン設計なのである。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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