
心地よい運転感覚と快適性、さらに重く大きい車体という物理的な制限。この3要素を高次元で両立させるための巧みな演出だが、時としてはそれが心情的に割り切れない2面性を生み出しているのだ。

そこまで考え込んで、ミニバンを評価する必要も一般的にはないだろうし、新型エルグランドの走り全般に対しては好感を持って受け入れたのも事実である。最上級ミニバンを標榜するに十分な内容である。ただ、前記したような部分もあることを納得するのは、実際にオーナーになる人ならば非常に重要なことだ。あるいは、多少の違和感にも繋がる演出も、ニッサンの現実的なエルグランド・オーナーに対する思いやりや優しさの現れなのかもしれない。思いやりと捉えるのは好意的な解釈かもしれないが、実際に試乗中は、「このクルマで気のあった人間同士で長距離ドライブでもしたいな」との思いも強く、その感情こそが最も優先すべきエルグランドに対する評価なのである。