ホンダ、レース技術者たちの最後のスピリット

「レースのホンダ」と呼ばれたのはいつの日のことか。。。もはや今の若者にはそんな形容はほとんど知られていない時代になってしまった。それに加えて、ホンダがF1で大活躍した時代を知る世代でも、「レースのホンダ」というイメージを強く抱く人は熱狂的なレースファンかホンダ党のカーエンスーに限定されてしまう。

「レースのホンダはどこへいった?」そんな疑問を最も強く抱いたのは2008年末のF1からの撤退ではないだろうか。ロス・ブラウン氏率いる強固な体制になって、これからというタイミングでの撤退は非常に残念なものであった。しかし、それも仕方がないことなのかもしれない。今やホンダは自動車の製造だけでなく、航空機も開発し、環境問題にも真剣に向き合わなければならない巨大企業に成長しているわけだから、レースのイメージだけで世界的なビジネスを展開していくことは不可能だからだ。

にも関わらず、この未曾有の不況の時代になぜ「HSV-010 GT」という売上には直結しないプロダクトがデビューを飾るのだろう。実に不思議なことであり、1年前には想像もできなかったことだ。しかし、現実に「HSV-010 GT」は姿を現した。
HSV-010 GT
【写真提供:本田技研工業】
「HSV-010 GT」の登場は「レースのホンダ」に憧れ、本田宗一郎のスピリットに感動して入社した人々の熱い思いの賜物ではないだろうか。レース部門に働く人達が、粛々と行われる削減、経営環境の見直しの中で、お蔵入りしてしまうはずのマシンの開発の手を緩めず、プロジェクトをきっちりと進めていたからこそ、「HSV-010 GT」は産まれたと言える。忘れてはならないのは、ホンダにはまだそういう熱いスピリットを持った人が居るということである。

記者会見にも登場した「HSV-010 GT」のプロジェクトリーダー、瀧敬之介氏のインタビュー映像がホンダのモータースポーツ・ウェブサイト内にある「2010 SUPER GTスペシャルコンテンツ」で見ることができる。パソコンでご覧いただいている読者の方は一度、瀧氏のインタビューをご覧になって頂きたい。そこで語られているレースに対する熱い思い、「勝ちたい」という純粋な思い。。。自然な口調で思いを語る瀧氏の言葉には「レース屋、ホンダのスピリット」が溢れている。ともすれば、NSXと共にSUPER GT撤退も考えられた状況の中で新プロジェクトを実行に導いた瀧氏の顔には大きな喜びがあふれているように感じる。
HSV-010 GTと瀧プロジェクトリーダー
【写真提供:本田技研工業】
「HSV-010 GT」は単なる新しいレーシングカーではないのだ。
熱い思いを持った人々に敬意を表しながら、今年の「SUPER GT」を是非ともサーキットでお楽しみ頂きたい。そして、このクルマがいつかロードゴーイングカーになって公道を走る日が来ることを祈ろう。

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