空力性能は特に重要なファクター
レーシングカーにおいて最近はエンジンよりも重要視されているのが「空気力学」=空力の分野である。レーシングカーはみな一応にコンパクトで、流麗な美しいフォルムを持っているが、空気抵抗が少ないクルマほど速いことは皆さんもよくお分かりだろう。レーシングカーには余分な膨らみなどは必要なく、常にスーパーモデルのごとく完璧なシェイプであることが理想である。空気抵抗を減らすことはまず大前提であるものの、それよりも大事なのは空気の流れを読むことだ。F1などのハイエンドなレーシングカーは高速で風を当てて空気の流れをコンピューターで読み取る「風洞」と呼ばれる実験施設で開発されている。24時間、風を当ててセンサーでデータを吸い上げ、空気の流れを研究している。今やこれは当たり前の作業で、常時その最適なフォルムを見出そうと実験が行われているのだ。
英国ブラックリーにある「メルセデスGP」の風洞実験施設を訪れたミハエル・シューマッハ(左)。実車の1/50以下の実験モデルに風を当てて空気の流れを測定する施設だ。 【写真提供:DAIMLER】 |
空力の鬼才、エイドリアン・ニューウェイによるRED BULLのF1マシンRB5 【写真提供:Bridgestone Motorsport】 |
空気の力で下に押さえつけるダウンフォースの重要性
空気抵抗を減らしたいだけなら、マシンを痩せさせれば充分だ。なのに、どうして24時間も空気を当てデータを取るのであろうか。その理由はレーシングカー開発における空気力学最大の焦点「ダウンフォース」の向上のためだ。レーシングカーはストレートで速いことはもちろん必要だが、それ以上にコーナーで速く走ることができなくてはならない。遠心力でコーナーの外側へ振られていくマシンをいかに安定させ、路面に食いつかせておくかがコーナーを速く回る鍵となる。そこで必要なものが「ダウンフォース」だ。
ダウンフォースの原理 |
実はこれは飛行機とは逆の原理である。飛行機の翼は一見水平のように思えるが前から後ろにかけて下がる形状になっている。その圧力差でレーシングカーとは逆の「上向きの力(揚力)」を翼でもらい、飛行機は空中を飛んでいられるのだ。
飛行機の揚力の原理 |
飛行機の理屈と全く逆で、レーシングカーの得る「ダウンフォース」も低速ではあまり効果がなく、高速になればなるほど強くなる。「ダウンフォース」の効きを強くするためには飛行機の着陸時同様に翼を大きくすれば良いのだが、レースの場合は車両規定で翼の寸法は決められており、レース中に大きさを変化させることもできない。
また、クラッシュなどで翼が破損した場合は適正なダウンフォースを得ることができなくなる。すなわちマシンは安定せずに本来のスピードでコーナーを回れなくなってしまう。要は、翼が無くなれば飛行機も飛ぶことができず、レーシングカーも安定して走ることができないのである。
難しい話になってきたが、ダウンフォースの話はもう少し御紹介しよう。