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レース業界は終わってしまうのか?(2)(5ページ目)

3回シリーズで「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介している。今回は「SUPER GT」「全日本ロードレース」などの国内レースに注目し、未来への展望をお届けする。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

鈴鹿8耐: 感動のレースはずっと続けるべき

鈴鹿8耐での井筒仁康の走り
【写真提供:MOBILITYLAND】
かつては「若者のお伊勢参り」と表現され社会現象的ブームにまでなった「鈴鹿8時間耐久ロードレース(通称、鈴鹿8耐)」も今年は観客動員が5万人台と過去最低を記録してしまった。決勝日の天気予報が雨だったうえ、今年はホンダのファクトリーチーム「Team HRC」が不参加、さらにはMotoGPやSBKとスケジュールが被ったせいで海外有名ライダーの参戦もなく、全日本ロードレースの耐久版的な大会となり、話題が少なかったことも影響した。

しかし、雨が降ったりやんだりの波乱のコンディションも相まってか、レースは非常にドラマチックで感動的なものになった。表彰式では土砂降りの豪雨にも関わらず多くの観客がその様子を見守り、ライダーに声援を送り続けていたのである。8時間を走り終えたライダーたちの疲れはその瞬間吹っ飛んだことであろう。

観客動員数は5万人台と少なかったが、「鈴鹿8耐」は有名なGPライダーが出場しなくてもこれだけの観客が集まるレースイベントなのである。少ない、少ないと言っても国内で人気ナンバーワンの「SUPER GT」よりも多くの観客が集めることができている。しかも「SUPER GT」よりもチケットの値段が高いにも関わらず。これは不思議な事実である。

そんな鈴鹿8耐に集うファンの情熱は感嘆ものだ。レースがコンペティティブであろうとなかろうと、彼らはレースを楽しみ、イベントを味わい、選手やチームに声援を送り続ける。そう、「鈴鹿8耐」は本当にバイクとレースが好きな人たちの集まりなのだ。不況下で全てがマイナスに作用していた今年、モータースポーツ界に一筋の明るい光をくれたのが、誰あろう今年の鈴鹿8耐でサーキットに集ったファンであった。「彼らは日本が誇るべきレースファン」だと僕は思っている。
トップ10トライアル予選に出走するライダーに熱い声援を送るファンと関係者
【写真提供:MOBILITYLAND】

「鈴鹿8耐」は来年33回目の大会を数えることになる。来年はMotoGPのアメリカGP(MotoGPクラスのみ)が同じ週末に開催されるためGPライダーの出場は期待できない。SBKのスケジュールは被っていないが翌週には英国ドニントンパークでレースがある。BSB(英国スーパーバイク)はスケジュールが被ってしまっている。すなわち、海外からのゲストライダーの参戦は今のところ大きくは期待できない状況だ。

それでも「鈴鹿8耐」は来年も多くの観客を集めるだろう。真夏の8時間を戦いナイトランでゴールするという「鈴鹿8耐」が伝統的に守っているこのスキームは唯一無二のものであり、ファンは年に1度やってくるこの大会を心底楽しみにしているのだ。だからこそ「鈴鹿8耐」はずっと続けていくべきレースだと思う。

1度のレースで、こんなに「泣き」「笑い」が混在するイベントも珍しいし、何より感動の宝庫だと思う。それを何ひとつ知らない人たちは数字だけを見て「二輪レースは地に落ちた」と感じるかもしれないが、実はそうではない。鈴鹿がこのスキームのレースを続けていく限り、またいつか陽が当たる時がやってくると思う。その時のために、過去のガードナーや平忠彦の名勝負やドラマばかりに固執せず、今味わえる感動をしっかりと記録に残し、それを伝えていくことが何より大切なことだと感じている。

次のページではその他の四輪レースの未来像を探ります。
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