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レース業界は終わってしまうのか?(2)(4ページ目)

3回シリーズで「冬の時代」を迎えているモータースポーツ業界の現状と今後の展望をご紹介している。今回は「SUPER GT」「全日本ロードレース」などの国内レースに注目し、未来への展望をお届けする。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

全日本JSB1000:ヨシムラ撤退で見えるもの

国内のバイクレース界は四輪レース以上に厳しい状況が続いている。国内に世界的な4つのバイクメーカーが存在しながらも、二輪車の需要がピーク時の8分の1まで落ち込んでいる現状ではレース業界に充分な広告宣伝費が回ってこないのも無理はない。スポーツバイクに対して感情移入する人の数は確実に減少を続けており、ファンの平均年齢もグングンあがってきている状況だ。

そんなこともあり、国内メーカーとしては重要の見込めるヨーロッパ、アメリカでのレース活動を軸にしてワークス活動を行っており、国内レースの予算は年々削減される傾向にある。そして、噂になっていた通り、スズキ系の名門トップチーム「ヨシムラ」が来シーズンの全日本ロードレースからの撤退を決めた。「ヨシムラ」はヨーロッパを中心に開催されている「スーパーバイク世界選手権(SBK)」に参戦するそうだ。
今年は鈴鹿8耐も制した名門「ヨシムラ」。鈴鹿8耐にはこれまで同様に挑戦を続けるが全日本ロードレースからは撤退する。
【写真提供:MOBILITYLAND】
日本のロードレースを代表するチーム「ヨシムラ」の撤退は全日本ロードレースにとって大きな痛手である。「ヨシムラ」は参戦していて当たり前、四輪のF1でいえばフェラーリ的な存在のチームだっただけに今回の撤退話は多くの人に衝撃を与えた。逆にいえば、今の全日本ロードレースは参戦する側にとって魅力を感じられないものになってしまっているということなのかもしれない。

「ヨシムラ」が参戦する最高峰クラスはSBKなど海外のスーパーバイクレースと異なり改造範囲が狭く、より市販車に近い車両規定の「JSB1000」でレースが行われている。ファクトリーチーム(バイクメーカーのワークスチーム)が撤退して以降、ローコストでプライベートチームが参戦しやすいように作られた規定ではあるが、参戦する側にとってみれば技術開発の余地が少なく、特に「ヨシムラ」のような技術屋集団で自社のアフターパーツを製作している企業にとっては今の「JSB1000」は魅力的ではないのである。仮に全日本ロードレースで世界のスタンダードである「SB(スーパーバイク)」の車両規定が採用され続けていれば、「ヨシムラ」は海外に向けたパーツを製作し、全日本で使い、販売することで全日本に参戦しながら商売も成り立つということになっていたわけだ。
「JSB1000」のレースベース車両は各メーカーから市販されている。写真はヤマハYZF-R1の2010年モデル・レース車両。価格は131万2500円(税込)。
【写真提供:ヤマハ発動機】
「JSB1000」の規定はレース車両を購入し、ライダーを乗せて走らせたいというプライベートチームには好都合なものではあるのだが、実際には各メーカーのトップチームにはファクトリーマシン級の最新パーツで固められたバイクが与えられているし、レースで重要な鍵を握るタイヤも特別仕様だ。同じ銘柄のタイヤであってもトップチームにはテストで実力が実証された勝つためのタイヤが与えられている。すなわち、新規参入のチームがレースベース車両を買ってタイヤを購入していきなり優勝争いができるのかというと、いくらライダーに実力があろうとも難しいことなのだ。今年の「JSB1000」のレースでいえば最終戦の鈴鹿までチャンピオン争いに残っていた8人とそれ以外のライダーのチーム体制には明確な差があった。

全日本ロードレースを長年に渡って観戦し、各チームの実績や実力を知る人なら、そういったチームの力関係やマテリアルの違いは想像できるだろう。しかし、新しくファンになった人はどうだろうか?何かのキッカケでライダーのファンになり、サーキットに応援に来たはいいが、いつも10番手以降しか走っていない状態であれば、きっとそのうち応援のしがいが無くなるのではないか。そのライダーがトップ争いに加わることができない説明はどこにも書いていないし、当然、ライダーも自分から体制面での違いは口にしないだろう。「彼は性能が明らかに違うバイクに乗って、自分の出来る範囲で頑張って上を目指している」と理解するまでには何レースかの観戦と情報収集が必要になる。つまりは今の「JSB1000」の現状は新しいファンに全く不親切なのである。

トップチームは良いマシンを得て、プライベートチームはそれに対抗して頑張る。レースは昔からそういうものだ。しかし、そろそろ、そういう当たり前を見直さなくては新しいファン獲得は難しいのではないかとも思う。今の「JSB1000」の状況であれば、メーカーの息がかかったトップチームのクラスとそうでない完全プライベーターのクラスに別けて混走させたほうが、より観ている方にとって分かりやすいと思うのだ。それこそ改造範囲が広い総合優勝を争う「SBクラス」と市販レースベース車両を使用し改造がほとんどできない「STクラス」に別ければ、より分かりやすく、参戦する側にも魅力的ではないか。
最終戦「MFJグランプリ」のレース2のスタート(鈴鹿)。「ヨシムラ」以外のチームの撤退も噂される中、来シーズンの「JSB1000」は何台のマシンがグリッドに並ぶことになるのか?
【写真提供:MOBILITYLAND】
次のページでは夏の伝統的耐久レース、鈴鹿8耐を取り上げます。
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