Fニッポン:大改革の1年は不発に終わった
「全日本F2」「全日本F3000」から数えると20年以上の歴史を数える日本のトップフォーミュラ「フォーミュラニッポン」は今年、大改革の1年になった。米国スイフト社製のニューマシン「FN09」が導入され、エンジンもGT500クラスと同規格に設定された3.4リッターV8エンジンが使用されることになり、完全なるリニューアルを図った重要な年であった。フォーミュラニッポンの新車「FN09」。特徴的なフロントウイングが目を引く。 |
今年の「フォーミュラニッポン」は新車・新エンジンになることで各チームの戦力図が変わり、さらには新導入のオーバーテイクシステムで抜きつ抜かれつのバトルが展開されるはずだった。しかし、一部のチームが導入した新しい仕様のダンパーが劇的な効果を生み出したことで、合法か?違反か?の論争から技術競争にまで発展してしまった。シーズン途中で規制が行われ、ダンパー論争は収束したが、ファンが期待した接近した優勝争いが数戦見られなかったのは残念である。
オーバーテイクバタンの使用状況はヘルメットの上の5つのランプで識別可能。赤いランプは開幕戦は昨年のチャンピオン、第2戦以降はその時点でのポイントリーダーが使用する。観客にも分かりやすいシステムの導入で面白さが増すはずだったが・・・ 【写真提供:MOBILITYLAND】 |
Fニッポン:見えない戦いを見えるように
「フォーミュラニッポン」は何を楽しみにして観るレースなのだろう? ふと疑問に思う。打ち出しとしてはドライバーの戦いであろう。若手がベテランやチャンピオンをやっつけて表彰台で笑う姿や思わず声をあげてしまうオーバーテイク合戦は誰もが見たいところである。空力効果に優れたウイングカーのニューマシンでコーナリングスピードが上昇し、速度域の高い中での接近戦が見れることは他の国内レースにはない迫力だし、ドライバーの頑張りで華麗なオーバーテイクが実現できるなら最高である。しかし、残念ながらチームがアイディア技術で頑張ってしまったことで、そのストーリーが崩れてしまったのが現実だ。もちろんチームタイトルも争っているからチームが頑張ることは悪くはないし、レギュレーションに違反であると書かれていない以上、新しいアイディアで競争することは何ら悪いことではない。ごく当り前のことだ。レースの世界では全てが競争なのだから。ただ技術競争に対する結論が出るのが遅かったのは否めない。
フォーミュラニッポンのエンジンはトヨタ、ホンダの2タイプがあるが、回転数などが制限されるなどして技術競争でコストが高騰しないように性能の均一化が図られている。一方でシャシーは全車同一(ワンメイク)で基本的にマシンの形状は変えられない。自由に交換できるのはダンパーなど限られた部分のみである。レースの鍵を握るのは最適なセッティング(スイートスポット)を知るエンジニアの存在で、シャシー変更でデータがリセットされた今年はいかに早く新車の特徴を見つけ出すかがポイントになった。マシンを速くするためにはレギュレーションのグレーゾーンも見つけ、独自のアイディアを絞りだすのも彼らの仕事だ。しかし、ピットでレポートする僕らですら見えない(見せてもらえない)部分の競争が観客の興味を引くものであるのかは疑問である。 |
悪者探しをするのはニッポン人の習性であるが、そんなことをしてもレースは盛り上がらない。事実、悪い人はいない。ただ単にチグハグなだけ。いや、良い言い方をすれば、それだけみんな「勝ちたい」という思いで、真剣に戦っているのだ。だったらその真剣さをファンに分かりやすく伝えればよいのである。「フォーミュラニッポン」は何が魅力で、何をどう楽しんで欲しいのかをもっと明確に伝えれば、おのずとファンはついてくると思う。
来シーズンは公式戦が1戦減って、全7戦のレースになる。果たして何台のマシンがグリッドに並ぶことになるのか?各チームの体制が見えてくるのは来年の2月頃だろう。
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