シーマが初めてのマイナーチェンジを行った。ポイントは二つ。直噴エンジンから普通のインジェクションになったことと、日産もプリクラッシュセーフティ機能を加えたことである。

説明しよう。まずエンジン。今までのシーマに搭載されていたのは、日産式直噴のDi(ダイレクト・インジェクション)。ライバルであるセルシオを圧倒する10・15モード燃費だった半面、排気ガスのクリーン度は☆一つ。全モデル☆三つ化を推進している日産にとって、フラッグシップモデルが☆一つじゃカッコつかない。かといって直噴のまま☆三つ化しようとすると、開発予算もタップリ掛かってしまう(技術的には可能。トヨタ・ウィッシュや新型ワゴンRターボも直噴で☆三つ)。月販目標台数200台のクルマに大規模な投資など出来ぬ。

そこでコストカッターの鬼ゴーン社長率いる日産は、コスト低減のため技術的に退歩させて普通のインジェクションのエンジンとした(アメリカ仕様のシーマやセドリックに搭載されているタイプ)。10・15モード燃費で大幅に悪化しても、コストダウンの方が重要だという判断だ。面白いことに試乗してみると、直噴より圧倒的に好ましいエンジンフィールを持つ。

直噴の場合、低回転域でトルクが細く、エンジン音もガサつく。使い慣れた普通のインジェクションならアクセルレスポンス抜群! アクセル踏めば気持ちよい吸気音と共にエンジンが吹け上がっていく。燃費など気にしないユーザーであれば「直噴時代よりずっと良いクルマになったな」と思うだろう。自分で買うなら納得できないものの、多くのシーマユーザーにとっては歓迎すべき「技術の退歩」かもしれない。


プリクラッシュセーフティも、技術的に見たら後退してしまった。今までのシーマは、レーダーにインスパイアやセルシオのプリクラと同じ高性能の『ミリ波』を採用していたのに、マイナーチェンジで『レーザー』へ変更されている。シーマの開発スタッフに聞くと「探知距離や探知能力、悪天候時の有用性でミリ波レーダーとヒケを取らない性能を持っています」。レーザーレーダーが持つの大きな3つの弱点を完全にカバーしているということ。

それが本当ならインスパイアもセルシオもプリクラシステムを大幅にコストダウンできるようになるだろう。日産の主張が正しいかどうかはジックリ取材しなければならないけれど、ミリ波と同等の性能をレーダーで出すのは難しいと思う。とはいえ「技術者は絶対ウソつかない」が私のスタンス。信じておきます。デビュー当時は先端技術を多く採用したシーマだったけれど、マイナーチェンジで少し遅れた技術のクルマになったのがさびしい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。