社会問題化したWinny(ウィニー)による情報流出
官房長官が国民にWinny(ウィニー)を使わないよう呼びかけるなど、異例の事態となったWinnyによる情報流出問題。Winnyをインストールしているパソコン同士でファイルを共有
<目次>
Winnyとは、ファイルを共有するためのソフトウェア
Winny(ウィニー)とは、巨大掲示板2ちゃんねる上で47氏と呼ばれていた人物が開発した無料のファイル共有ソフトです。WinnyはインターネットでつながったWinny同士でファイルの共有を行い、 自分の持っているファイルを皆に公開してダウンロードしてもらったり、自分が欲しいファイルを検索して手に入れることができます。Winnyは2002年にベータ版が公開され、以降47氏が逮捕されるまで開発が続きました。Winnyでは、どんなファイルを共有できるの?
Winny(ウィニー)は動画・写真・音楽・ソフトウェアなど、多種多様なファイルを共有することができます。こうした特徴から、著作権を無視して市販の映画・CD・ソフトウェアなどを公開する人が多くなり、 著作権侵害容疑の逮捕者も多数出る騒動となりました。Winny(ウィニー)の仕組みは? Win MXと何が違うの?
ファイル交換システムWinMXとWinnyでは何がどう違うのか、それぞれの大まかな仕組みを見てみましょう。■中央にあるサーバに情報を集めるWinMX
WinMXは、ファイル交換システムとして日本語パッチの普及と共に急速に利用者が増加しました。中央サーバにファイル情報(のみ)を集め、実際のファイル交換はパソコン同士で行う仕組みです。
例えば、Aさんの欲しいファイルをBさんが持っていることは中央サーバの情報で分かりますが、実際のファイルのやりとりは、AさんBさんのパソコン同士で行います。 この際、ファイルを皆で共有するのではなくお互いに持っているファイルを交換するのがWinMXの大きな特徴です。
これまで主流だった中央サーバを経由するファイル交換 誰がどのように…といった手がかりがつかみやすい
■複数のコンピュータを経由する匿名性の高いWinny
これに対し、Winnyは中央サーバを介さず、Winnyによって形成されたネットワーク内のコンピュータ同士でやりとりが出来ます。ファイルは暗号化されたキャッシュでやりとりされるうえに、実際のファイル所有者以外のコンピュータに分散して置かれたファイルをバケツリレー方式で運ぶため、 誰がどのファイルを公開しているのか、自分のファイルを誰がダウンロードしたのかなどは分かりません。特定の人にファイルを送ったり、特定の人を探し出すこともできません。
例えば、Dさんが探しているファイルの所有者はFさんですが、Aさんのパソコンに保存されているため、Fさんのファイルだとは分からない仕組みなのです。
また、WinMXと違いファイルを多数の人間で共有するため、ファイル交換の必要がなく、自分のファイルを提供しなくてもWinnyからのファイル入手が可能となっています。
DさんがAさんのコンピュータで欲しいファイルを見つけ入手! 所有者がFさんだということはDさんAさんには分からない仕組み
では、なぜWinnyから情報流出が社会問題化してしまったのでしょうか?
Winnyを介して感染する暴露型ウィルスAntinny
Winnyでは「このフォルダを皆に公開する」と指定したフォルダの内容だけが公開されます。しかしWinnyを介するウィルスに感染したコンピュータは、公開フォルダに入れていない情報をWinny上に公開したり、データを勝手に公開フォルダに入れたりします。個人情報や機密情報の流出問題の多くは、このWinnyを介して感染するウィルスが原因でした。Winnyで問題になったウィルスではAntinny(アンティニー)およびその亜種が最も有名で、 これらはWinnyを使ってダウンロードしたファイルに仕込まれていたり、ファイルそのものを装っていたりします。Antinny感染したコンピュータは、デスクトップのファイル情報や開いていた機密情報などをWinny上に勝手に公開してしまうことから大問題となったのです。
流出してしまった情報の削除・回収が困難なファイル共有ソフト
ファイル共有ソフトで流出した情報を完全に削除することは不可能
こうなると、国や企業の機密情報はもちろん、プライベートな情報の流出も脅威です。チャットのログ、メールのやりとり、写真、ネットバンキングやオンラインショップでの買い物に利用するID・パスワード、 そのほか個人を特定できる情報などの多くをパソコンに保存している方は多いのではないでしょうか。それらが不特定多数の目にさらされ、永久に削除できない恐怖を想像してみてください。Winny経由のウィルスの感染により、勤めていた会社に損害を負わせてしまった人、恥ずかしい写真が流出することで社会的に深刻なダメージを負った人も少なくありませんでした。
Winny=悪なのか、新ソフト開発とユーザーのモラル
恐ろしい面ばかりが報道された影響もあり「Winny=悪いソフト」という認識は急速に広まっていきました。しかし、ファイル共有ソフトで公開・入手しているファイルが違法ファイルでなければ、 基本的にソフトの利用自体には問題がなく、パソコンにWinnyがインストールされてるからといって罰せられることもありません。Winnyの開発・配布者であった金子勇氏(47氏)が逮捕されたのは、Winnyを開発したことが理由ではなく、 Winnyを使って著作権のあるデータを公開した人を助けた「著作権法違反幇助」という容疑です(2011年に無罪確定)。この開発者逮捕に関しては当時様々な議論が活発に繰り広げられ、2013年に金子勇氏(47氏)の死去が報道された際には「逮捕により優秀な技術者の才能が潰された」といった逮捕批判の声も多く聞かれました。
好きなアーティストの音楽ファイルをWinnyで共有…それ著作権侵害です
映画・音楽・写真といった著作権で守られたデータを皆が閲覧できるよう公開したり、 入手したデータをCDに焼いて販売したりすることは法律違反で罰せられますので絶対に行ってはいけませんが、技術開発と技術を利用するユーザーのモラルは分けて考える必要があるといえるでしょう。
コンピュータからの情報流出を防ぐ方法
自分では「法律を守っている」「個人情報の取り扱いに気をつけている」つもりでも、ウィルス感染などにより、いつ個人情報が危険に晒されるかもわかりません。Winny事件のような騒動に巻き込まれないために今すぐできる自衛策をご紹介しておきます。お子さんと共有しているパソコンの設定も確認しておきましょう
■パソコンからファイル共有ソフトを削除する
特に仕事とプライベートでパソコンを共有している場合は、ファイル共有ソフトの使用は絶対に止めましょう。Winnyユーザーが増えた当時、Winny以外を経由し感染する暴露型ウィルスも次々登場し騒動の拡大に拍車をかけました。ウィルスに感染しやすい環境を作らないためにもファイル共有ソフトや怪しいソフトの使用は厳禁です。
■ウィルス対策ソフトは導入必須
ウィルス対策ソフトの有効期限が切れていたり、ウィルス情報のアップデートを怠ったりしていませんか? お使いのウイルス対策ソフトが有効期限内か、最新のウィルスに対応しているか、今一度チェックしておきましょう。ウィルス対策ソフトは、自動的に最新ファイルにアップロードする機能を有効にしておくことが大切です。
ウィルス対策ソフトを導入していないパソコンは、たとえ共有ソフトなどをインストールしていなくても、絶対にインターネットに接続してはいけません。 パソコンを買い換えたとき、ハードディスク交換時などはウィルス対策ソフトの入れ忘れにご注意ください。
■Windowsは常にアップデートし最新の状態に
インターネット上の脅威からパソコンを守るためには、Windowsを常に最新の状態に保っておくことが大切です。WindowsUpdateの設定は自動更新をおすすめしますが、自動更新では支障がでる場合は、こまめにアップデート内容を確認し定期的な手動更新を行いましょう。悪意のあるソフトウェアの削除ツール (MSRT)やMicrosoft Safety Scannerによる、悪質な脅威の検出・削除も行っておくと安心です。
■PCに個人情報やID・パスワードを保存しない
デスクトップにpass.txtといった名前でパスワードの保存用ファイルを作っていませんか? ウィルス感染などにより、ネットバンキングの口座番号、オンラインショップの会員番号やパスワード、プロバイダの接続IDやパスワードなど他人に知られたら困る重要な個人情報が、氏名や住所と共に公開されたり盗まれる可能性があります。パソコンで個人情報を一括管理している方は、多少面倒でも紙媒体での保存などに変更しておきましょう。
■ダウンロードするファイルの拡張子に注意を
ファイルを装ったウィルスは、拡張子(.txtなどファイル名最後尾についている記号)を注意深く観察すると見分けられる場合があります。パソコンのファイル表示のオプションを変更し、ファイルの拡張子まで確認できるようにしておくと、怪しいファイルを見つけやすくなります。メールの添付ファイルも要注意です。
ソフトやサービスを安全に使えるかどうかは自分次第
個人情報保護と正しいネット利用はご家族全員の心がけが大切です
次々に新しいソフトやサービスが登場する現在、トラブルを防ぐためには、コンピュータの設定はもちろん、日ごろからの心がけが何より大切です。個人情報を守り、ソフトやサービスを正しく使えるかどうかは、結局のところ自分次第なのです。
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