「長時間見せないように」と、日本小児科医会も提言
テレビと前頭葉の発達には大きな関係が |
テレビやビデオを見たり、ゲームをしたりしている時は、前頭葉の働きが弱くなることが確認されています。前頭葉は意識の統合をつかさどる所で、意志、意欲、人間らしい抑制など、いかに生きるかという判断を行うことにより、行動を制御しています。この領域は、進化の過程をみても、人がもっとも人らしくあるために顕著な発達を遂げた場所です。
テレビを見ている間はボーっとした「脳の思考停止」状態が続きます。そして、これが習慣になってしまうと、前頭葉の機能が衰えしまうのです。その結果、日常の注意力が散漫になり、集中力が低下したり、イライラしたり、現実とテレビの中の出来事を混同して考えるようになってしまったり、という弊害が起こります。また、記憶がはっきりしないことで、物事が連続的に考えられなくなることも生じます。その結果、自己中心的な思考、コミュニケーション能力の低下などが起こってきます。
「イライラしてちょっとしたことでキレる」「電車の中で平気で化粧をする」こうした行動も前頭葉が健全に発達をしなかったせいであるといわれています。テレビの番組によっては、セクシャルなもの、バイオレンスな内容もありますが、前頭葉が発達途中の子どもたちがこうした刺激的な場面ばかり見ることによって、前頭葉の配線がうまくいかずに、自分自身の健全な性的発達にも影響が出ることも考えられます。
教育的内容な番組だったら大丈夫?
子どもが過剰な刺激を受けてしまう番組ではなく、子どもにとっても、ためになりそうな番組だったら大丈夫でしょうか。もちろんそれは上手に使えば、大丈夫だと思います。テレビの教育番組も、早期教育のビデオプログラムも、要は使い方次第です。まず、たとえ良質なプログラムでも、長時間見続けるのは良くありません。内容的に良いものだとなおさら、油断すると見せっぱなしになってしまいがち。常に刺激を受け続けることが日常になってしまうと、前述したように、前頭葉の発達に影響が出てきます。
それと、テレビにあだ名をつけるとしたら「時間泥棒」です。それを見ている間、親子間のコミュニケーションや友達との遊び、外で自然と触れ合うなどの大切な時間を奪ってしまいます。こうした人との現実のコミュニケーションや自然との触れ合いが、前頭葉を健やかに発達される大切な行為なのです。
まずは実生活で生き生きとしたコミュニケーションがあってこそ、良質の教材の良さが活かせるのではないでしょうか。