「アメリカはみんな無痛」は本当?
自分できちんと情報を選別することは、とても大事 |
私は今年2007年初めにニューヨークに調査旅行に行き、マンハッタンにあるルーズベルト病院を見学しました。そこでは自然出産の情報を伝えるマタニティクラスが開催され、自由な姿勢で出産できるバースセンターにおいて助産師のケアを受けながら出産することができます。日本の一部で言われているように、「無痛分娩が主流」では決してありませんでした。
「アメリカは無痛」といった情報は、アメリカに駐在しているビジネスパーソンの妻である妊産婦さんたちが、「言葉も通じにくい土地で、一人で産むのは不安」「夫の立会いは時間が決まっていないと難しい」といった理由で計画出産・無痛分娩を選択する方が多いのではと推察します。そうした方々が帰国して伝わる情報によって、「アメリカではみんなが無痛」という話が広まっているのかもしれません。
アメリカのことについてもう少し言えば、「ジャンクフードばかり食べている」というイメージがいまだにあるかもしれませんが、現在は有機農業も大いに推進されており、オーガニック素材を利用したレストランのランチはニューヨーカーたちの定番ですし、野菜は日本人より多く摂取しているという調査も出ています。食事もお産も「ナチュラルに行こう!」という機運は高まっているのです。私がニューヨークで参加したマタニティ・ヨーガクラスでも、参加者はみんなナチュラルなお産をしたいと希望していました。
2代、3代先のことも考えて
私がナチュラルなお産をすすめる理由は、「お産は痛いのを我慢することに価値があるから」ということではありません。必要でない限りあまり薬の力に頼らないで、体の生体反応を変えずに産んだほうが、その後の母子の健康や絆づくりの上でもメリットが多いからです。日本人が自然なお産を志向する傾向があることを「お腹を痛めてこそ母という締め付けだ」と捉える人もいるようですが、そういう意味ではなく、日本人は自然であることや普通であることの良さを感覚的にすんなり受け止めることができる民族なのではと思います。「機が熟したときに産まれる」という自然の摂理を重んじる。それは受け継いでいきたい感覚だと思います。もちろん、無痛分娩を選んでよかったという人もいるでしょう。お産はどちらが良くてどちらが悪いと簡単に言えるものではありません。命の誕生に「これさえ選べば大丈夫」ということはありません。ただ私はリスクを知った上で、後悔のないやさしい誕生を迎えて欲しいという思うだけです。
お産を取り巻く状況は変化し、産科医や助産師不足も深刻化しています。情報も多種多様です。こうした中であらためて自然なお産について、『体と心にやさしい ナチュラルなお産』(アスペクト刊)でまとめてみました。
産む女性たちが、もっとセルフケアに対する意識を高めて、主体的に産むことを楽しめれば、人手不足のお産の現場の状況も改善に向かうかもしれません。「本来の身体能力を出し切ったお産」についての確かな情報が足りないせいで、もったいない選択をしないで欲しい。妊娠中の方はもちろん、今のところ予定のない方にとっても大切な、セルフケアのことについても書かれているので、せひご参考にしてください。
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