男性が分娩室に入るとEDになる?
さて、日本でも認知されたラマーズ法。出産に詳しくない人でも「ヒーヒーフーッという呼吸に合わせて子どもを産む」という言われ方で知られるようにはなりました。しかし、ラマーズ法は妊婦が自発的に取りたい姿勢や自由な呼吸に制限をする部分もありました。それと同時に、分娩室に入る夫にきちんとしたルールを伝えることができなかったため、立ち位置が悪くて局部を見てしまった場合に「ラマーズ法で出産後、男性がインポテンツになった」「セックスレスになった」ということが話題に上るようになったのです。さらにこれが原因で夫婦関係が破綻し「ラマーズ離婚」と呼ばれるという現象まで起こってしまいました。これを理由に、医療サイドで「夫を分娩室で立ち会わせるとインポテンツになる」と決め付けて、徐々にラマーズ法を制限する動きも出てきました。
「立ち会い出産」と「見学出産」は違う
男性がEDになってしまった理由は、決して「出産に立ち会ったから」ではありません。本来目指すべき立ち会い出産ではなく、デリカシーとセンスが全くもって欠如した「見学出産」を行ってしまったからです。夫を妻の性器が見える側に立たせて出産を「見させる」。ただ傍観者として夫が分娩室に居るだけ。そんな「見学出産」をしていたのでは、居ないほうがまし、ということになってしまいます。「立ち会い出産によって、EDになってしまうのでは…」という不安に対しては、「女性の性器が見える側に立たなければ大丈夫」とお答えしています。そいいう理由でなくても「立ち会うかどうか迷っている」という方にはハッキリこう申し上げます。「妻の出産に立ち会うことによって、大きすぎるほどの得るものはあっても、失うものは何もありません」と。この体験は決して小さなことではなく、「命というものはこうして誕生し、人生とはこうして始まる」ということを体験的に知っている人間になるのとならないのとでは大違いなのです。「会社の仕事があるから」という方には、「妻が新しい家族を、新しい命を産む瞬間に、会社で電話をしたり請求書を書いたりしていることが大切ですか?」と問いたいですね。
「大丈夫か?」という質問はNG
ここで、男性が立ち会うときに知っておきたいことのいくつかをご紹介します。「見学出産」ではないと申し上げた通り、陣痛に耐える妻の腰をさすったり、励まし続けたり、フリースタイルの場合はしがみつく妻の支えとなったり、思っているよりも重労働です。でもお母さんも赤ちゃんもがんばっていますから、「一緒に命を迎える準備をしている」という充実感はたっぷりあるはず。それと、妻を励ますときは、「大丈夫か?大丈夫か?」と言ってしまうと逆効果なのでご注意。励ましているつもりが質問攻めをしてしまい、「うっとおしい」と思われてしまいます。言葉としては「大丈夫だよ」「がんばってるね」「上手に呼吸してるね」など、肯定的で包容力のある呼びかけを心がけて。妻が何を言おうと「うん、そうだね。がんばっているね」と受け止めてあげてくださいね。
こうして新しい命を二人で迎えて、その赤ちゃんを胸に抱いた瞬間の感動を多くの男性に味わって欲しいと思います。「俺も生んだ」そう笑顔で言う新しい父親は人間としても美しいですよ。
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