立会い出産で得るものはあっても、失うものはない!
家族で迎える感動のお産。得るものはあっても失うものはありません |
「立会い出産は最近のブームなんですよね?」。そんなご質問をいただくこともありますが、近年になって立ち会い出産が始まったというわけではありません。自宅で出産をしていた時代は、わざわざ「立ち会い」をしなくても、お産婆さんや家族みんなで産む女性を助けながらが出産をしていたわけです。もちろん、すべての父親がそこに立ち会ったわけではありませんが。たとえば貴船神社が多くあるような漁師町などでは、お産が始まると男性はみな部屋を追い出されるという風習もあり、その土地の文化や風習によって違いはありました。しかし、家族に助けられながらの自宅出産というのが当たり前の時代があったのです。
日本では1960年を境に出産場所に変化が生じました。自宅で出産する人の割合と病院などの施設で出産する人の割合が逆転したのです。その後、病院で出産する割合はどんどん増えて、現在は病院や診療所での施設出産が98.8%を占めています。
きっかけとなったラマーズ法
こうしたなか、日本ではここ15年余りでしょうか、「立ち会い出産」が広まり始めました。夫の立ち会いといえば、ラマーズ法という出産方法を思い浮かべる方も多いと思います。ラマーズ法は、フランスの産科医ラマーズ・フェルナン博士が提唱した自然出産法ですが、そのルーツは旧ソ連にあります。1948年、お産の痛みの解明に取り組んだ旧ソ連の医師グループが、薬剤を使わない「産痛からの女性解放」を宣言し、開発した精神的無痛分娩法が、1951年、フランスのラマーズ博士によって改良されたのがラマーズ法。この新しい自然分娩法はフランスなどのヨーロッパに普及した後、アメリカ、そして1960年代後半には日本へも伝わりました。実質的に広まったのは1985年くらいからです。アメリカでこのラマーズ法が普したのは別の理由もあります。ラマーズ法が入ってくる以前は、保健制度がなかったアメリカで出産時の状況について家族が知り得ず、何かことが起こったときの裁判で「言った・言わない」ということで揉めることが多かったのです。そこで、夫が分娩室に入ることができるラマーズ法で出産しようとする人が増えたのです。訴訟大国アメリカらしい理由ですが……。