出産準備/共働きの育児・子育て

男性の育児参加は平等社会のバロメーター(2ページ目)

男女格差日本は79位!格差が最も少ないベスト1はスウェーデンで、2位がノルウェー、3位がフィンランドと北欧諸国が上位を独占。上位は男性の育児参加先進国が占めているのです。

大葉 ナナコ

執筆者:大葉 ナナコ

妊娠・出産ガイド

不平等社会は精神的な未成熟社会

日本が大きく順位を下げたことにガッカリした理由は、「女性である私が女性の地位が低いと知らされたから」よりも「日本という国がまだ未成熟だということが露になったから」ということの方が個人的には大なのです。私と同じ女性でも「男女は別に平等でなくてもいいんじゃない?」と簡単に思い込んでいる人もいるかもしれません。

でも、想像してみましょいう。たとえば現実問題として、ドメスティックバイオレンスでパートナーから暴力を振るわれている女性がいるとする。しかし「今は子どもを養える職業を持っていないから離婚できない」と、殴られるがまま辛い日々を過ごしている女性もいるというわけです。こうした具体的な不平等を示されれば、どんな女性でも人として平等であるべきと願うはず。

労働の機会についても、男女雇用機会均等法はできたけど、その仕事社会は男性が作ってきた深夜まで働くリズムだったり、ハードな働き方だったりします。いわく残業は当たり前、家族で一緒に夕食が取れなくて当たり前という定義。そんな会社生活に、子どもを産んだ女性が難なく戻れるわけもありません。男女雇用機会均等法ができたからといって、産後職場に復帰する女性が増えたかというと決して増えてはいないのです。私たちはなぜ産みたいかといったら、育てたいから産むのですから。たとえ妻が専業主婦の場合を考えたとしても、夫が家事・育児をサポートしないなんておかしな話です。

しかし、夫も会社社会のルールに縛られて疲れ果てているのが現状です。ベネッセ次世代育成研究所の調査(PDF形式)によると、育児休暇が義務だったら取得したいと考えている男性は46%という結果が出ています。父親も生まれたわが子のそばにいて、家事育児をサポートしたいと考えているのにも関わらず、実情はそうはいっていない。

つまり、男女雇用機会均等法ができたとか、男女共同参画という掛け声とか、制度だけあっても変わりようがないのです。その国の考え方、文化・風土が変わらなければ、いつまでたっても絵に描いた餅。そもそも、この時代になっても「男女の役割分担」と称して「男性は外で仕事、女性は家事育児」という発言を平気でなさる文化人もいる。子どもという小さい人が発熱して苦しんでいても、その手当て方法を知らない男性は大人の男としても未成熟ではないでしょうか? 仕事だけしていればいいなんて、育児するより楽なことです。未来の人である子どもを幸福な自立したひとりの大人になるように育てていくことが育児で、この仕事は楽ではありません。男女がいなければ、決して次世代の命は誕生しないのですから、男女で未来の人育て、つまり子育ての食事や洗濯なども男性もするのは、とても自然なことでしょう。

男性はお金作り? 女性は未来の人育て?

乳幼児期など一定の時期は授乳などで、母親である女性が育児時間を多くもつことはあっても、女性だって一人の人間として自分の人生設計資金を作れる能力を持っているわけです。その時々でペースコントロールしながらやっていけるはず。古い固定観念に縛られた人は、まるで家事育児を「サブの仕事」のように捉えているのも、人として成熟していない証拠です。

心をこめてやる食事つくりや育児がサブの仕事で、自分はそれに関わらなくても大丈夫というセンスそのものが、国際社会から立ち遅れています。子どもの自殺や引きこもりにくわえ、学力が落ちてきているのだって、父親が子どもたちを「未来の大人たち」と捉えて、その育成に関わらなかったことも関係しているのではないでしょうか?

「自分はお金作り、妻は未来の人育て」と発言する人は、人間としても幸福な大人には見えません。夫婦の関係性も、男女というだけで上下関係というのは未成熟と言わざるをえないです。いくら働いているからといって、それはその組織でしか通用しない仕事。例えば自分の子どもが風邪を引いたときに、おかゆやしょうが湯を作れなくて、会社の仕事ができても、大人としてどうかと思います。

企業戦士時代のロールモデルに縛られている

多くの男性は「自分は家事育児をサポートしたいけど、自分だけ会社から帰るわけにはいかない」と中途半端に古い悪しき慣習に縛られているように思えます。大正時代、明治時代といえども、育児をする父親は大勢いたのです。「男は仕事、女は家庭」なんて、たかだか高度成長時代からの企業戦士をいっぱい増やすために作られたロールモデルであって、その強い印象にいつまでも引きずられていると、国際的な競争力も落ちていくと個人的には思います。

男女不平等であるということは、男性のほうが人間的に優遇されるということ。「愛する異性が幸福ではない国、そんな未成熟社会でいいの?」という話ですよね。男と女は身体的特性が違うのは当然で性差はありますが、役割分担として論理がすりかえられています。会社の仕事だけが仕事ではないのです。

命の源である食事を作り食べること、体調もできるだけセルフケアすること、そんなことも人間の根本的な営み=仕事です。現代社会はそうした営みをほとんどアウトソーシングしていて、食事は外食産業、体のメンテナンスは病院が請け負っています。こうした社会構造も人間の成熟を妨げて幼稚な社会を作っているという鋭い考察もあります。ワークライフバランスとも関係してきますが、仕事と暮らしは、どちらに傾いてもバランスがくずれると幸福感が減るのに、今までは働くことで暮らすことや育児時間が犠牲になってきたわけです。男女格差が改善されていかなければ、誰も子どもを産もうとは思いません。

家庭内男女平等が始まらなければ、国際的に男女とも幸福に生きられる「男女平等社会」を創造することはできません。「男女共に幸せな社会」ということをイメージしてみてください。男性も女性も、人としてたった一度の人生を自分として生きることができる。「男性だから」「女性だから」損をする、得をするということではないのです。生まれてくる子も、男性か女性かのどちらかです。愛するわが子が損をする性だったら、幸福感が減りますよね?

ですから、男性の育児参加は、男女平等社会のバロメーター。逆に言うと、育児参加から始めることによって、男女でともに未来育てをする姿を子どもに見せることができ、子どもがしあわせな大人になっていくのです。子どもが男子でも女子でも、幸福に生ききることができる世の中を作る。これが、大人の、共働き夫婦の仕事です!



<関連リンク>
世界経済フォーラム
ベネッセ次世代育成研究所
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