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産科に厚かった診療報酬改定 結果は出る?

平成20年4月に実施された診療報酬改定には、産科を応援する項目がたくさん入っていました。その効果は出るのでしょうか。実施後、現場はどう受けとめたのかを(社)日本産婦人科医会が調査しました。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

妊婦さんの救急搬送受け入れが増収になる新しい仕組みも作られていました

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妊婦さんの救急車を受け入れる時、病院に十分なメリットがあることは大切です
医療費削減が産み場所の減少につながっていると言われてきましたが、平成20年度診療報酬改定では産科が重点評価となって手厚い加算があり、同年4月から実施されています。

自分の施設にかかっていなかった妊産婦の救急搬送受け入れが収入増につながる点数加算「妊産婦緊急搬送入院加算」が新設され、1件5万円と他の項目に較べてかなり高い金額でした。またハイリスク出産を扱うことで加算できる「ハイリスク分娩管理加算」も対象拡大や点数の倍増があり、妊娠中の入院に認められる項目も新設されていました。しかし・・・実施後も救急の受け入れ困難は止まらず今に至っているのは皆さんご存じのとおりです。

実施後4ヶ月に当たる昨年8月に実施され、(社)日本産婦人科医会が産婦人科医療施設391か所から回答を得たアンケート調査でも、点数アップがねらった効果は今ひとつのようです。

病院の増収は医師の報酬アップとは別

「妊産婦緊急搬送入院加算」は産科救急の要になっている周産期センターの病院では95.0%、センター病院以外の病院では69.8%が算定していました。

しかし病院勤務の医師からは「加算された分は病院の収入となっただけ。自分たちの報酬にはつながっていないので手厚くされたという実感がない」という声が上がりました。現状を変えられるほどの増収ではなかったのか、または産婦人科医だけを優遇できないと考える経営陣が多いためか、そうした病院が多いようです。病院の医師たちの負担感軽減が点数引き上げの大きな目的で「ハイリスク分娩管理加算」算定の条件にもなっているのですが、この時点では効果を否定する声が優勢でした。

周産期センター以外の病院、個人産院のがんばりが評価されていない


ハイリスク出産の扱いが少ない中小の病院や診療所(個人産院)にとっては、搬送を受ける側の病院に手厚かったこの改訂は疎外感もあったようです。

ハイリスク妊娠が大規模なセンター病院に集められ、その病院に体制を維持するためのお金が回るのは大切なことです。ただ、ともかく産科閉鎖が多いため、生き残った診療所がいろいろなお産を幅広くカバーしなければならない地域も地方にはたくさんあります。中規模の病院でも、救急の受け皿になっているのに、算定できる施設基準に届かなかったため加算を受けられないところが少なくないようです。

お金以外の問題も大きい


産科が重点的に加算されたことは画期的でした。多額のお金が動くのならともかく、多少のお金では解決できない問題がたくさんあって現実はなかなか動かないかもしれません。

改訂は2年に1回ですので次は平成22年です。改訂の前には、今回の改訂項目を算定した病院の一部に対して勤務医師の負担軽減を調べる実態調査がおこなわれます。

体制の整ったセンター病院中心に考えられた改訂なので、そこに結果が出て、少しでも多くのお産に効果が波及することが期待されます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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