30分かからないで生まれてしまい、産院に間に合わないこともある
入院が間に合わず自宅出産になる可能性はゼロじゃない
どうしても間に合わない! そんなときの姿勢は横向き寝がいいかもしれません(イラスト/平井さくら)
神奈川県藤沢市で自宅出産専門の開業助産師をしている井本園江さんは、助産師の到着が間に合わなかった時のことを妊婦さん全員に教えておきます。
実際、「教えておいてよかった!」と思った経験もしているそうです。産科学では「陣痛が10分間を切ったら陣痛の開始」と考えて、産院に電話するように言います。しかし、その方の場合は、10分を切ったのち、陣痛がわずか4回来ただけで、もう生まれてしまったそうです。出産3人目のお母さんでした。
自宅で出産しそうになったら……まずは産院に電話を
万が一、家にいるうちに「まもなく生まれそうだ」という感じになってしまったら、ともかく産院に電話して、その旨を告げること。産院では、電話でその状況にあった具体的な指示をくれるでしょう。産院と相談して、必要になりそうなら、救急車も呼びましょう。お産の時の救急車出動は控えるのが原則ですが、生まれてしまいそうならそれどころではありません。来てくれますから、電話をかけてください。
産院との電話は、お産の間中、切らないでつなぎっぱなしにしておきます。その都度「実況中継」よろしく状況を知らせ、指示を仰ぎ続けて下さい。そうするうちに救急車が着いて、意外と余裕がありそうであれば産院へ移動することになります。でも、そうでなければ、もう家で産むしかありません。
前出の井本さんいわく、「特に大きな病院で産もうとしていた人が自宅出産になったら不安かもしれませんね。でも家庭でもほとんどのお産は無事産まれるのですから、ともかく落ち着いていただきたいと思います」とのことです。
部屋は暖かくして、バスタオルを準備
お産の時は破水などで部屋が汚れてしまうので、何か敷物を用意します。清潔で大きなビニールがあれば一番ですが、何もなければ新聞紙をたくさん拡げて、その上に清潔なバスタオルを何枚も敷いてください。バスタオルはたっぷり手元にもってきましょう。赤ちゃんが生まれたときにも必要です。清潔さの度合いとしては、通常の洗濯がしてあればOKです。滅菌などは要りません。赤ちゃんは、家庭に普通にある菌で病気になるようなことはありません。
赤ちゃんのために大切なのは、部屋が暖かいことです。特に冬場は十分に暖かくしておきましょう。大人が少し暑いと思う程度で、赤ちゃんにはちょうどいいのです。浴室などは寒いので、そこでは産まないか、さもなければ十分に温めます。
助産院なら普通のお部屋で産むのですから、それと同じです。落ち着いて!
最後は横向きに寝るのがおすすめ
産む姿勢はどんな格好でもいいのですが、赤ちゃんを取り上げてくれる人が誰もいない場合は、四つんばいや立ち産はやめたほうがいいとのこと。赤ちゃんが床に落ちるからです。もうひとつの理由としては、会陰裂傷を防ぐため、いきみをコントロールしやすい姿勢のほうがいいからです。横向きや、背を45度くらい倒している姿勢がおすすめとのことです。
ただ、自宅でひとりで産むことになるような人は、不思議と会陰が切れにくいことが知られています。人に頼れず、真剣に自分の身体と向かい合って産むからかもしれません。
また井本さんによると、お産の早い人は会陰が柔らかいから早いのだと言います。柔らかい会陰は、あまり裂傷を起こしません。ただ、絶対に起きないわけではありませんから、油断は禁物。最後のところは決していきみ切らないようにして、できるだけゆっくり産みます。
さあ、赤ちゃんが出てきたら?>>>家で赤ちゃんが生まれてしまった時の対処法
◆監修・井本園江さん(開業助産師/神奈川県藤沢市・井本助産院)
井本さんはかつて湘南鎌倉総合病院の産科で婦長さんをしていらした方。一緒に、妊婦さんの素朴な質問にお答えする本を作り、春秋社より出版(2019年6月 編集部追記)。
※この記事の初回公開日は2006年12月であり、日付を更新して再掲載しています。
【関連記事】