『茨城県における出産の実態と満足度に関する調査』というタイトルのこの論文は、県内で0ヶ月~8ヶ月の赤ちゃんを育てている母親459名に、お産の状況と、満足度をたずねた調査です。比較が難しいので、帝王切開で出産した人は除いて統計がまとめられました。
満足度と出産状況の関係はどうだったでしょう? 満足度は4点満点で評価し、全体の平均点は2.5点でした。そして満足度が平均より0.5点高い3点以上の人とそれ以下の人のお産状況を比較したところ、統計は、3点以上の人たちに、次のような傾向があることを示しました。
お産に満足できた人の特徴
●経産婦が多い
一番大きな差が出たのは、これでした。初産では、満足度が高い人と低い人が121人対123人だったのに対し、経産では129人対80人でした。
●点滴、導尿がなかった人が多い
どちらも約半数の人が受けていた処置ですが、これを受けたグループでは満足度が少し下がっていました。両方ともトラブルを想定しての予防的措置ですが、動きにくくなるため、ベッドに寝たきりのお産になりやすい処置です。
●分娩室の印象は「心地よい」「安心感あり」「温かい」
分娩室の印象は「手術室のよう」が46.8%と圧倒的でしたが、温かいという印象が持てた人も1~2割いました。この人たちの満足度は高かったようです。
統計から見る満足な出産とは
出産経験がある人が、家庭的な雰囲気の分娩室を持つ産院で、点滴や導尿のない、拘束された感じがない出産をする‥‥。統計的に見ると、こんな風景が「満足出産」の最もあり得る形として浮かんできます。
では、経産の人は、初産の人とどんなお産の違いがあったでしょうか?経産の人の背景を見ていくと、もっといろいろなことがわかりそうです。
今回の調査では、経産の人の特徴も数字にはっきり表れていました。経産の人は「4割近く(37.8%)が前と同じ産院でリピーター出産」でしたし、「マタニティ誌を読んだ人が初産の2/3」など、情報不足も感じていませんでした。また、お産の経過や、薬の使われ方にも、大きな違いがあることがわかりました。
・写真・雰囲気を柔らかくするため、ステンドグラスや木を使った分娩室(岐阜・高田医院で写す)
・このシリーズは、下記の文献をご紹介しています。
『茨城県における出産の実態と満足度に関する調査』 加納尚美、島田智織、小松美穂子、永瀬つや子、楠見由里子、佐々木美智子、山崎京子、阿部真理子、宮澤順子/茨城県立医療大学紀要第9巻:1~10
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