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年金以外のセイフティネットって何があるの?(2ページ目)

日本の社会保障制度には公的年金以外にもいろいろあります。ただし、加入する制度・利用できる制度は、公的年金と同様、おもにその人の職業で決まっています。会社員とフリーランス・自営業者が利用できる、年金以外の社会保障制度にはどんな違いがあるのか、比較していきます。

原 佳奈子

執筆者:原 佳奈子

年金入門ガイド

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会社員とフリーランス・自営業者の公的医療保険制度の比較

はじめは公的医療保険の比較です

はじめは公的医療保険の比較です

公的年金と同様に、公的医療保険制度はおもにその人の職業で加入する制度が異なります。一般的に会社員は健康保険に、フリーランスや自営業者は国民健康保険に加入します。

会社員が加入する健康保険は、会社ごとあるいはグループ企業ごとや同種の事業ごとに設置された健康保険組合が実施する組合管掌健康保険と中小企業が加入する都道府県ごとにおかれた健康保険協会が実施する協会けんぽの2種類があります。医療保険加入者の約60%は健康保険に加入しています(平成19年3月現在、厚生労働省HPより)。健康保険の保険料は、組合管掌健康保険は健康保険組合ごと、協会けんぽは都道府県ごとに決まっている保険料率と毎月の給与や賞与をベースにした標準報酬を使って計算します。保険料率は健康保険組合及び都道府県ごとに異なりますが、現在は9.3%前後の保険料率になっています。健康保険の保険料は、原則として会社と加入者が折半負担します。また、健康保険は保険料を負担する加入者本人だけでなく、扶養する家族も被扶養者として健康保険の給付を受けることができます。

フリーランスや自営業者が加入する国民健康保険も、都道府県ごとに医師や薬剤師など同種の事業で実施する国民健康保険組合と市区町村が実施する国民健康保険の2種類があります。医療保険加入者の約40%が国民健康保険に加入していますが、そのうちの90%以上は市区町村が実施する国民健康保険に加入しています(平成19年3月現在、厚生労働省HPより)。

同種の事業で実施する国民健康保険組合は現在全国で100種類以上あり、保険料の計算方法は同様に保険料率で計算したり、加入者全員が同額の保険料だったり、年齢ごとの区分を設けているなどさまざまです。市区町村で実施する国民健康保険は、自治体ごとに保険料が設定されていますが、国民健康保険には健康保険のように「被扶養者」という区分がありません(市区町村が実施する国民健康保険の保険料のしくみは「理想の老後を送るには~田舎暮らし編」をご覧ください)。

それでは、健康保険と市区町村の国民健康保険の給付を比較してみましょう。公的な医療保険から支給される給付は、診察や注射などの治療行為や投薬などの現物給付と高額な自己負担の一部を還付する現金給付にわかれています。現在は現物給付を受けたときの自己負担が各制度同じ割合なので、現物給付については加入する制度による違いはほとんどありませんが、現金給付については以下のように制度ごとの違いがみられます。
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現金給付のうち、仕事ができない間、所得保障の目的で支給される出産手当金と傷病手当金は健康保険のみの給付(※)です。上記の給付のうち、健康保険組合が実施する健康保険では、さらに保障内容が充実している付加給付が支給される組合もあります。現金給付を比較すると、国民健康保険より健康保険の方が充実した給付内容といえるでしょう。

※国民健康保険では出産手当金と傷病手当金が任意給付(市区町村ごとに条例で支給をするかしないか決定できる給付)なので、現在は支給している市区町村がありません。

また、会社員の場合は健康保険の給付の対象となる病気やけがは、業務外の理由によるものです。業務上や通勤途中の病気やけがは、労働者災害補償保険(通称「労災保険」、以下労災保険とします)の対象となります。労災保険は、健康保険より保障内容が充実していて、以下のような保険給付が行われます。
 
(保険給付に「補償」がつくのは、業務上の事故による病気やけがの場合)

(保険給付に「補償」がつくのは、業務上の事故による病気やけがの場合)

労災保険の給付には、健康保険の現物給付や現金給付と同様の給付を行うだけでなく、公的年金のような障害や死亡に対する給付や、介護保険のような介護に対する給付もあります。また、健康保険に比べて医療を受けたときの自己負担がなかったり、治るまで所得保障が続くなど給付の内容がより充実しています。さらに、労災保険の給付は仕事を辞めた後も続くので、退職後も仕事ができない状態であれば休業(補償)給付や傷病(補償)年金は支給され、治療が必要ならば療養(補償)給付も支給されます。

なお、労災保険の保険料は会社のみが負担するので、健康保険のように給与から保険料が天引きされることはありません。労災保険は雇用される労働者が業務災害や通勤災害によって被った病気やけがを補償する保険給付なので、自らが経営者であるフリーランスや自営業者は原則として加入することができません。仕事中や通勤途中については会社員の方が公的な制度でより手厚く保護されているといえるでしょう。
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