社会ニュース/社会ニュースの最新トピックス一覧

虐待死はなぜ防げなかったのか?(2ページ目)

大阪で3歳と1歳の子供がマンションに置き去りにされ、餓死する痛ましい事件が起こりました。児童相談所に通報があったにも関わらず、命が救えなかったのは、なぜなのでしょうか? アメリカとの比較も交え、説明していきます。

執筆者:All About 編集部


通報されたケースに対して、当局はどのように対処するのか?

アメリカでは児童虐待の通報があったら、まず職員が各家庭に出向き、虐待の事実を調査します。この時点で命の危険があると判断された場合は、子どもは両親、あるいは虐待をしていると疑われる当事者からは引き離されます。

その後、子どもや両親などへの聞き込みを中心にさらに調査を行い、両親から長期に渡って引き離された方がいいと判断できる場合は、裁判所の許可を経て、児童相談所などに保護されることになります。両親に対しては、虐待事実が認められれば刑事告訴も考えられるでしょう。

やはり甘かったか? 今回の大阪での対応

大阪のケースでは、周辺の住民から3回通報があり、児童相談所の職員が5回マンションを訪問しました。しかし、それだけで終わり、母親とも子どもたちとも会わずに引き返してきています。

今回は、子どもたちや母親の名前が分からない匿名状態であったことが、それ以上の踏み込みを妨げた原因であると言われます。しかし、マンションの管理人やオーナーに聞けば、名前くらいはわかったでしょう。

母親の名前や勤務先が聞ければ、電話で事情を聞くことも可能なはず。母親に長期間連絡が取れない場合は、すでにネグレクトであると判断して、強制的に室内に立ち入ることを検討できます。

2008年4月の児童虐待防止法の改正によって、日本でも虐待の恐れのある家庭に対して、強制的な立ち入りが可能になりました。しかし、実行されたのはわずか3件。プライバシーの問題が強く、なかなか実行できていないのが現状です。

強制立ち入りにも子どもの名前が必要で、今回のような「名前がわからなかった」が、強制立ち入りができない原因になってしまうこともありえます。

長妻厚労相は事件後に「児童虐待防止法の改正を検討している」という意思を表明しており、実現することを期待しています。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます