夏だから… 戦記物系
極限状況しか選択できない、それが戦争…
『私は魔境に生きた――終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年』
嶋田寛夫著
光人社NF文庫 1000円
熾烈を極めたニューギニア戦線。あの『ゲゲゲの鬼太郎』を生んだ水木しげる先生も、この島で戦っていたとか。そのニューギニア東部で、戦局厳しい昭和19年、日本人兵士17名が、すべての補給を断たれて篭城しました。以来10年、終戦の事実も知らず、敵影に脅えながら、ジャングルの中で自給自足の生活を送った記録です。
飢えと病気に苦しめられ、残ったのはたった4人でした。本書は、想像を絶する孤独と苦しみに耐えた兵士たちの生活を、淡々とした口調で語っています。こういった極限状態を、シンプルライフと重ね合わせることはもはやできませんが、戦争という愚かな行いが、人間の尊厳をどれほど踏みにじるものかを忘れないための「地上の漂流記」として、読み継がれるべき本でしょう。