ドキドキワクワク! 実話系
手持ちのわずかな物資と、知恵と勇気でサバイバル
『コンチキ号漂流記』
トール・ハイエルダール著 神宮輝夫訳
偕成社文庫 735円
北欧の人類学者ハイエルダールらが、南太平洋のポリネシア人のルーツが南米にあることを証明するため、古代同様の素材で作ったいかだで、ペルーからポリネシアに向けて出航し、8000キロにわたる航海に成功した記録。
何しろ、いかだの素材であるバルサ材を南米の山奥から伐り出してくるところから始まり、綱渡りのような資金・資材の調達、乗組員集めなど、ビジネス書的な面白さ満載の上に、船出してみれば、いかだの上から釣り糸を垂らして食糧調達、イカの墨で字を書いてみたり、向こうから飛び込んでくるトビウオをフライパンでキャッチしたりと、「男の子の夢」そのままのようなエピソードがぎっしり。ハイエルダールの唱えた説は、残念ながら学会では認められなかったけれど、彼らの生き生きした冒険物語は今でも、子供も大人も夢中にさせる力を持っています。
無人島に生きる十六人
須川邦彦著
新潮文庫 420円
周りを海で囲まれた日本ですから、漂流してしまう人は昔から結構いたようですが、これは明治31年、漁業調査に出かけた日本の帆船が遭難した時の、船長の思い出語りとして書かれた本です。乗組員16人は無人島に漂着し、7ヶ月を生きぬくことになるのですが、飲み水にさえ不自由する暮らしの中で、結束を強くし、希望を失わずに暮していく乗組員たちの姿が感動的。
漂着した直後、船長が全員に言い渡した約束というのがいいんです。「一つ、島で手にはいるもので、くらして行く。二つ、できない相談をいわないこと。三つ、規律正しい生活をすること。四つ、愉快な生活を心がけること。」これはまさに、シンプルライフの真髄といっていいでしょう。本来、子供向けに書かれたものなので、醜い部分はまったく登場せず、安心して読むことができます。