音響外傷の症状
人間の耳は小さな音を聞くのに適しています。大音量で音楽を楽しむのはほどほどに!
以前は「音響外傷」というと、仕事中に大きな音を聞くことが多い職場で起きる症状でしたが、コンサートなどで大型のスピーカーが使用されるようになってからはコンサート会場での音響外傷が増加しました。普段から携帯用音楽プレイヤーで音量を大きくする癖がある人にも注意が必要ですが、夏フェスなどに行って大音量で音楽を楽しむ人が多いこの季節は、耳の健康にも少し注意するようにしましょう。
音響外傷の原因
ヒトを含む哺乳類は、鳥類や爬虫類などの他の動物に比べ、夜間の視力と聴覚が優れています。これは遠い祖先が月明かりの夜に活動し、昆虫などを捕食していたからと考えられており、ごく小さな音でも聞き分けられるように発達しています。身近な哺乳類である犬と比較すると、人の聴力は劣っているように思いがちですが、それでも耳たぶや外耳でしっかりと音を集め、直接外気とつながっている耳道を持ち、鼓膜からの振動を耳小骨で増幅して、内耳細胞で聴く機構を持っている点では、やはり優れた聴覚を持っているといえます。
このような耳のつくりは小さな音を聞くのに優れていると言えます。そのため大きな音を聞くと、内耳細胞が振り切れてしまった状態になり、本来の構造が破壊されてしまうことがあるのです。遠くの地震の揺れを増幅して記録する地震計の針をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
音響外傷の予防法
音響外傷の予防法は大音量の音を避けるのが一番。特に人工的な音の場合は、スピーカーなどの音源を意識して、少し遠めに距離を取るだけでも効果があります。専門的な解説になるため詳しい計算式は省略しますが、スピーカーから少し離れた位置に場所取りするだけでも、音楽を楽しみながら音響外傷をうまく予防することができます。
音響外傷の治療法・後遺症
コンサートによる音響外傷は会場を後にしてから気付くことが多いようです。コンサートの感想などを話しているときにお互いの声が聞き取れないことなどで気づきます。帰宅してからも難聴や耳鳴りが残ることがありますが、睡眠中に回復し、翌朝になれば違和感が消えることがほとんど。その意味では軽い音響外傷はすぐに自然治癒すると考えて大丈夫です。但し、翌朝も聞こえが悪い場合は要注意。特に連日行われるようなフェスティバル参加中に耳の異常を感じた場合は、無理は禁物です。なるべく早く会場を後にして耳鼻科を受診しましょう。音響外傷の診断には聴力検査が必須。音響外傷を起こした場合の予後は個人差がありますが、症状のうち耳鳴りは残らないことが多いと言われています。しかし、耳鳴りは治っても内耳障害は元に戻らず難聴となってしまうことがあります。この場合の難聴に有効な治療法はありません。重度の音響外傷になり後遺症を残さないよう、しっかり予防することが大事なのです。
コンサートでは席取に注意!
余談ですがガイドも音響外傷になってしまったことがあります。初めての音響外傷体験はYESの初来日公演の後で、会場から出たときには周りの会話が聞き取れなくなっていましたが、翌朝には回復しました。その次はブラックサバスの初来日公演。こちらはスピーカーがフォーン型だったので覚悟はしましたが、終演後にやはり一時的な難聴になってしまいました。こちらも翌朝には回復していましたが……。屋外会場と違い、コンサート会場では席が決まっているので事前の場所取りや席の移動ができません。スピーカーから離れていても壁からの反射音も関係するので安心できませんが、少なくともダイレクトな音響外傷を予防するために、スピーカーに近い前方席だけは避けることをお薦めします。