相談のケースはどうなる?
まず錯誤について検討しましょう。相談のケースでは、相談者は、保証人になること自体には納得していたわけですから一見錯誤に陥っていないようにも思えます。しかし、相談者の他に保証人がいなかったのであれば、相談者は保証人にはならなかったのですから、保証人になることの動機について錯誤があったことになります。
法律の世界では、このような勘違いを、「動機の錯誤」といいます。
動機の錯誤があった場合に、錯誤が成立するかどうかは、動機が表示されたかどうかにかかっています。なぜなら、動機は心の中のことで、外に表示しない限り誰にもわからないことなので、これをすべて錯誤だとしてしまったら取引の安全を害するからです。
相談のケースでは、「他に保証人がいるから、私は保証人になります」ということをお金の貸主に伝えていれば、動機が表示されているので保証契約は錯誤によって無効となり、相談者はお金を払わなくてよいことになります。ですが、相談者がそのようなことを説明せずに保証人になっていた場合、相談者はお金を返さなければならないことになります。
次に第三者詐欺について検討しましょう。第三者詐欺は、相談者がA君にだまされて保証人になったということをお金の貸主が知っていた場合のみ、保証契約を取り消すことができます。貸主がそのことを知らなければ、契約を取り消すことはできず、相談者はお金を返さなければならないことになります。
最後に
保証人を頼んでくる人は、必ずと言っていいほど「迷惑はかけない」と言ってきます。保証人になってはいけないということを頭では理解していても、親しい友人から頼まれれば、義理や人情もあり、なかなか断りにくいものですよね。
保証人になるかどうかは、最終的には、皆さんの判断ですが、保証人はお金を借りた人が支払うことができない場合には、お金を借りた人と同じ責任を負うことになるということをきちんと理解したうえで、慎重に判断するべきです。