厚生年金に38年加入して働いた夫が、定年退職後ガンになり61歳で闘病生活になりました。妻のA子さんは、夫の厚生年金だけでは心もとないので、自分の老齢基礎年金を60歳に繰り上げて受給することにしました。
夫が亡くなった場合、A子さんには遺族厚生年金が支給されます。
しかし、65歳になるまでは一つの年金しかもらえませんので、遺族厚生年金かA子さんの繰り上げてもらっている老齢基礎年金かを選択することになります。
通常は、遺族厚生年金の方が老齢基礎年金よりも支給額が多くなりますので、こちらを選択すると、減額覚悟で繰り上げた老齢基礎年金は65歳になるまで支給停止になってしまいます。
65歳になると支給停止となっていた老齢基礎年金の支給が再開され、遺族厚生年金と二階建ての年金をA子さんはもらえるようになります。/b>ただし、再開された老齢基礎年金は、60歳で繰り上げた時点の減額率が一生涯適用されます。
夫婦で喫茶店を営んできたY子(58歳)さん。
夫婦共にずっと国民年金に加入してきましたが、61歳の時に夫が体調を崩して入院しましたので、国民年金を繰り上げてもらい始めました。そして、もらい始めて6ヵ月後になくなってしまいました。
もし、老齢基礎年金を繰り上げなければ、60歳から65歳になるまでの5年間は、寡婦年金がもらえました。
(参考:寡婦年金は、自営業者など国民年金の第1号被保険者として25年以上加入しており老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた夫が、老齢基礎年金も障害基礎年金ももらわずに亡くなった場合に、10年以上婚姻期間があり生計維持関係にある65歳未満の妻がいる時に、妻が60歳から65歳になるまでの5年間支給される年金)
でも、まさかこのように早く夫が亡くなるとは考えていなかったY子さんにとって、妻としては「長い間かけてきた国民年金をもらわない間に亡くなってしまったら…」という思いもありますから、繰り上げてもらったことに損得はつけたくありませんね…
S夫さんは、46歳の時に糖尿病と診断されました。
食事療法なども続けてきましたが、少しずつ合併症もでてきましたので、「せっかく国民年金を32年かけてきたのだから65歳になるまでに死んでしまったらつまらない!」…と、60歳から老齢基礎年金を繰り上げてもらいました。
ところが、糖尿病が原因で61歳の時に両目を失明してしまいました。
65歳になるまでに病状が進み、障害基礎年金が受給できるような重い障害の状態になってしまったのですから、もしS夫さんが老齢基礎年金を繰り上げてもらっていなかったら、1級の障害基礎年金を請求できたのです。(←事後重症)
32年分の老齢基礎年金を60歳0ヶ月から繰り上げましたので、年金額は37万1900円で月額3万円程度。もし失明した後に事後重症の障害基礎年金を請求したら、99万3100円(月額8万3000円ぐらい)の年金が一生もらえました。
いくら頭ではわかっていても、S夫さんのように「死んでしまったら元も子もない」という思いが強くなるでしょうし、少しでも医療費の足しが必要な状況であれば、繰り上げて老齢基礎年金をもらう選択肢はソンだとは言い切れません。
ただ、「何も、知らなかった」という後悔だけは絶対避けたいものですね。
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