転換期へ。基礎年金制度導入
順調な経済成長に支えられ、年金制度は充実した制度に成長していきますが、その中からさまざまな問題点も、浮かんでくるようになりました。その主なものとして
1.各制度がばらばらに機能しており、制度間の格差が大きい
2.高齢化社会へ向けて、給付と負担のバランスが将来的に保てない
3.国民年金に任意加入していない女性の無年金者が多い
の3つがあげられます。
例えば、独身時代にOLをしていたが、会社員との結婚を機に退職し、専業主婦になるという選択する人が多かったこの時代、OL時代の厚生年金を一時金で精算して、その後は国民年金に加入しない(当時は任意加入でした)人が、たくさんいました。このような選択をした人には、当時の制度では老後の年金はありません。また、高齢化が進み始めたことを受けて、将来の年金財源が不足することも心配されるようになってきました。
これらの問題を解決するため、国民皆年金体制がスタートしてから25年目の昭和61(1986)年4月、年金制度はその形を大きく変え、新年金制度に移行します。ここで導入されたのが「基礎年金制度」です。国民年金をすべての国民に共通の「基礎年金」として位置づけ、厚生年金や共済年金は原則として基礎年金に上乗せする2階部分の報酬比例年金として再編成されました。
これによって、もともと国民年金の加入者であった自営業者などは第1号被保険者、厚生年金保険や共済年金の加入者は第2号被保険者、それまで任意加入だったサラリーマンの妻等(専業主婦)は第3号被保険者として、全国民が新しい国民年金の被保険者になり、共通の「基礎年金」を受け取るしくみになりました。
更に、2階部分の年金のない自営業者やフリーランスの人(第1号被保険者)には、基礎年金の上乗せ年金としての役割をもつ国民年金基金制度が平成3年(1991年)に創設され、希望すれば加入できるしくみができあがりました。
年金制度は時代とともに変化し、私たちの生活を支えています |
この新しい基礎年金制度体制においては、原則として20歳から60歳まで40年間加入すると満額の老齢基礎年金を受給でき、最低でも25年加入すれば老後の年金(老齢基礎年金)をもらえるというルールになりました。そのため、新制度スタート時には、いくつかの救済措置が用意されました。
例えば、旧制度時代に任意加入だったために加入しなかった人や、会社を退職したときに厚生年金を一時金で精算してしまった人などは、その期間について年金額には反映されないが、年金をもらうために必要な加入期間には算入できることになりました。この期間は合算対象期間(いわゆるカラ期間)と呼ばれますが、この救済措置によって、老後の年金を受給することができた人はかなりいるのではないでしょうか?
現在そして今後。その変わらない役割
このような流れで、現在の年金制度の基礎は出来上がりました。この新年金制度移行後については、記憶に新しいところですが、到来する高齢化社会にむけて給付水準の見直しや、制度を支える現役世代の負担についての改正が多くなっています。
年金制度が時代の変化に合わせて姿かたちを変えていくことは、今に始まったことではありませんし、今でも変化し続けています。戦前・戦後と数々の大きな困難を乗り越え、国という巨大なバックアップのもと、多くの人々の生活をその最期の日まで支えてきた年金制度です。今後も時代の流れに合わせて変化しながらも人々の生活を生涯支えていくという役割は変わらないでしょう。やはり年金制度は、私たちにとって、これまでもこれからも必要なものであり続けるのではないでしょうか。
※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
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