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保険料納付記録を分割するとは?
年金分割という言葉がよく使われていますが、実際に分割されるのは、前述のとおり厚生年金の保険料納付記録になります。これは、原則年1回、会社が社会保険事務所(社会保険庁)に、被保険者ごとの給与や賞与を届出る(給与が変更になった時と賞与が支給された時はその都度)ことによって記録されるもので、記録された給与や賞与を、標準報酬(標準報酬月額・標準賞与額)といいます。標準報酬は、保険料の算定の基礎になるとともに、将来の老齢厚生年金の額を計算する際にも基礎になります。
離婚時に、夫の年金を妻へ分割することとした場合、夫婦の話合いや裁判所の決定により、分割割合(按分割合という)が決まると、請求により、社会保険庁の方で、夫婦それぞれの標準報酬を改定します。つまり、この場合、夫は、厚生年金被保険者期間の各月ごとに標準報酬が減額され、妻は、厚生年金被保険者期間の各月ごとに標準報酬が増額されることになります。
したがって、年金受給年齢になったときには、改定後の標準報酬を使って、老齢厚生年金(報酬比例部分)が計算されることになるので、夫は年金額が減ってしまい、妻は年金額が増えるということになります。これが年金分割のしくみです。
ただし、年金の受給資格をみる際には、分割を受けた保険料納付記録は算入されないので、分割を受ける妻は、自分自身の加入期間だけで、受給資格期間は満たす必要があります。
按分割合とは?
では、夫婦で話し合うことになる按分割合とは、どのように考えればよいのでしょうか?
そもそも分割は、婚姻期間中の夫婦それぞれの標準報酬の総額(給与総額)を算出し、標準報酬総額の多い方(第1号改定者という)から少ない方(第2号改定者という)へと分割されます。このとき、分割を受けることによって増額する側(一般的に妻)が分割後に夫婦の標準報酬総額の何%になるかを示したものを按分割合と呼びます。その上限は50%であり、下限は、分割を受ける側(一般的に妻)の分割前の持分にあたる割合です。例えば、妻が専業主婦の場合は、下限は0になります。
したがって、会社員の夫から専業主婦の妻へ、分割する場合、按分割合の範囲は0~50%になるので、その間で、夫婦間で協議をすることになります。必ずしも50%に分割されるわけではありません。
手続きの流れ
さて、按分割合を決めるためには、婚姻期間中の夫婦の標準報酬総額や、按分割合の範囲などの情報が必要になってきます。そこで、現在、それらの情報を夫婦双方、またはどちらか一方から、社会保険事務所に請求できるようになっています。
按分割合を夫婦間の話合いや裁判で決めても、それだけでは年金の分割は行われません。離婚後2年以内に社会保険事務所に標準報酬の分割改定の請求を行います。すると、社会保険庁にて、夫婦それぞれの標準報酬が改定され、改定後の保険料納付記録がそれぞれに通知されることになるのです(下図参照)。
分割後のそれぞれの年金額は?(次ページへ)