まるで迷路!ちょっと複雑な仕組みです… |
意外と複雑?!平均標準報酬月額
平均標準報酬月額とは、簡単に言うと厚生年金に加入していた全期間の標準報酬月額の平均額です。総報酬制導入により、平成15年3月以前は標準報酬月額のみを平均(平均標準報酬月額)していましたが、平成15年4月以降の期間については、標準報酬月額と標準賞与額を合わせた額から平均(平均標準報酬額)を求めます。平均標準報酬(月)額から、老齢厚生年金を計算する場合、以下のような計算式を用います。(A)平均標準報酬月額※1×給付乗率(7.5/1000)※2×平成15年3月までの被保険者月数 |
(B)平均標準報酬額※1×給付乗率(5.769/1000)※2×平成15年4月以降の被保険者月数 |
老齢厚生年金(報酬比例部分)={(A)+(B)}×1.031×0.985 |
(平成19年度物価スライド特例による計算式) |
※1 平成15年3月までは標準報酬月額のみ、平成15年4月以降は標準報酬月額と 標準賞与額から平均を算定する |
※2 生年月日により、読み替えあり |
自分の年金額を知るためには欠かせない平均標準報酬(月)額ですが、保険料納付記録だけでは計算できません。「平均標準報酬(月)額」は前述の通り、自分が年金に加入してきた全期間の標準報酬月額と標準賞与額の平均値ですが、長い期間、厚生年金に加入していた人の場合、年金制度に加入したばかりの頃と年金を受け取る頃では、貨幣価値が異なってしまいます。このため、そのまま平均してしまっては、正確な平均値にはなりません。
このような貨幣価値の違いを調整するために、平均標準報酬(月)額を計算するときは、過去の標準報酬月額を現在価値に置き換える「再評価」という見直しが行われます。再評価は年度ごとに定められた「再評価率」という係数を標準報酬月額に掛けていくという方法で行われます。
それでは、現在使用されている平成6年水準の再評価率表を使って簡単な再評価の計算をしてみましょう。
【例】
現在、フリーライターのサトウさん(昭和30年5月生まれ、51歳)は、昭和50年4月から昭和60年3月までの10年間、会社員として厚生年金に加入していたことがあります。会社員だった頃の保険料納付記録から当時の標準報酬月額がわかりました。昭和50年4月から昭和60年3月までの標準報酬月額を再評価します。
月数 | 標準報酬月額 | 再評価率 | 再評価後の 標準報酬月額 |
|
昭和50.4~51.7 | 16 | 100,000 | 2.25 | ※1 225,000 |
51.8~53.3 | 20 | 140,000 | 1.86 | 260,400 |
53.4~54.3 | 12 | 160,000 | 1.71 | 273,600 |
54.4~55.9 | 18 | 170,000 | 1.62 | 275,400 |
55.10~57.3 | 18 | 190,000 | 1.46 | 277,400 |
57.4~58.3 | 12 | 200,000 | 1.39 | 278,000 |
58.4~59.3 | 12 | 210,000 | 1.34 | 281,400 |
59.4~60.3 | 12 | 220,000 | 1.29 | 283,800 |
標準報酬月額の合計額 | 20,360,000 | - | 32,160,000 | |
平均標準報酬月額 | 120 | 169,667 | - | ※2 268,000 |
※1 当時の標準報酬月額100,000円に再評価率2.25を掛けた金額。 以下、期間の区分に従って適用される再評価率を使用して計算する |
※2 再評価後の標準報酬月額の合計(各標準報酬月額にそれぞれの月数を乗じた額の合計)を厚生年金に加入した月数(120) で割った金額 平均標準報酬月額 268,000円=32,160,000円÷120月 |
したがって、サトウさんの厚生年金加入期間である10年間の平均標準報酬月額は、268,000円になります。
上の表のように、再評価を行うことによって標準報酬の平均額は10万円以上差が出ます。10年間の平均額でも再評価によってこれだけ差が出るので、20年、30年という長い期間加入していた人の場合は、計算が難解になってしまいます。いずれにせよ、保険料納付記録から平均額を求めることは、自分では難しい作業でしょう。
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