切り取ったら元にもどりません! |
事実婚を解消したら?
Q:
入籍していない夫婦です。夫は厚生年金に加入する会社員(第2号被保険者)で、専業主婦の妻は被扶養配偶者と認められて第3号被保険者です。入籍していない事実婚の夫婦の場合も、事実婚を解消したら年金分割はできるのでしょうか?
A:
事実婚を解消した夫婦が離婚分割できるのは、入籍している夫婦と違って、この例のように妻が専業主婦で第3号被保険者(夫が第3号被保険者でも可)になっている場合のみです。
具体的には、分割の対象となる期間は、どちらか一方が被扶養配偶者と認められて第3号被保険者となったときから、事実婚を解消した上で扶養関係がなくなり第3号被保険者の資格を喪失したときまでとなります。
これは、入籍する法律婚と違って、事実婚はその開始と終わりの時期を特定することにはっきりとした基準がないため、一方が第3号被保険者であった期間が分割対象期間とされます。したがって、事実婚の期間中に夫婦共働きで妻も夫も厚生年金に加入していた期間があっても、分割の対象になりません。
また事実婚を経て入籍した場合は、事実婚と入籍後の期間を継続した期間として分割対象とします。反対に法律上離婚した後も事実婚の夫婦でいた場合はそれぞれを別個の期間として分割します。いずれにしても、分割の請求ができるのは、法律上の離婚または事実婚の解消からそれぞれ2年となります。
離婚時の年金分割をした後に元妻や元夫が死亡したら?
Q:
離婚時の年金分割をした後で元妻や元夫が亡くなった場合、何か影響はありますか?
A:
元妻や元夫が亡くなっても、分割された保険料納付記録に影響はありません。したがって、夫から妻に分割した場合、元妻が年金を受け取る前に亡くなっても、分割した保険料納付記録が元夫に戻ってくることはありません。
同様に、元夫が亡くなっても元妻に分割された保険料納付記録は変わりません。したがって、将来の年金額が少なくなったり、すでに年金をもらっている場合でも年金額が少なくなったりすることはありません。
また、「厚生年金に加入したことはなく、離婚時の年金分割によって『離婚時みなし被保険者期間』だけがある」という人もいるでしょう。前述のように、この場合は受給資格期間を満たせば、65歳からの老齢厚生年金をもらうことができます。
このように離婚時みなし被保険者期間に基づいた老齢厚生年金をもらっている人が亡くなった場合は、一定の要件を満たす遺族に対して遺族厚生年金が支給されることになります。つまり、「離婚時みなし被保険者期間」のみの老齢厚生年金をもらっている人が亡くなった場合でも、一定の遺族(子どもなど)がいれば遺族厚生年金(長期要件)が支給されることになります。
離婚した後、再婚したら?
Q:
離婚時の年金分割をした後、再婚しました。何か影響はありますか?
A:
元妻、元夫のどちらかが再婚しても、分割された保険料納付記録に影響はありません。どちらかが亡くなった場合と同じです。
また、離婚と再婚を繰り返した場合、それぞれ結婚していた期間に応じた保険納付記録を分割します。年金額を計算するときは、分割後の保険料納付記録(離婚時みなし被保険者期間を含む)を全て足して計算することになります。
最後に…
平成16年の年金改正で離婚時の年金分割が始まることが決まったとき、妻は「年金が確保できるなら離婚しても安心!」、夫は「離婚で年金が半分持っていかれる…」、と夫婦で正反対の思いが頭をよぎったご夫婦もいることでしょう・・・。
ご紹介したように、離婚時の年金分割は夫から妻への分割に限ったものではありませんし、全ての老齢年金を分割の対象にしているわけではありません。
また、離婚時の年金分割は離婚を後押しするために始まった制度ではありません。離婚時の年金分割は、「離婚して得をする(あるいは損をする)制度」ではなく、「離婚後の年金格差を小さくするための制度」なのだと理解しましょう。
※この記事の内容は、平成19年4月施行の離婚時の年金分割に限った内容です。
※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
◆関連リンク
あなたの年金額をシミュレーション
あなたのギモンに回答!「国民年金基金」をもっと詳しく
世代別の人気年金プランはコチラ