「もし、夫が…」「もし、妻が…」不安を感じたことはありますか?今回は第1号被保険者の遺族保障をみていきます。 |
今回は、第1号被保険者であるフリーランスや自営業者の遺族年金をみていきましょう。
誰がもらえる年金?~遺族基礎年金
第1号被保険者であるフリーランスや自営業者が死亡した場合、国民年金から遺族基礎年金が支給されます。ただし、遺族基礎年金をもらうことができる遺族とは、死亡した人に生計を維持されていた妻か子どもだけです。この場合の生計維持とは、夫の死亡当時一緒に暮らしていて年収が850万円未満とされています。また、夫の死亡当時は年収があっても、仕事を辞めるなどで将来にわたって(おおむね5年)年収が850万円未満になる場合も認められます。
さらに、遺族基礎年金をもらうには、死亡した被保険者(夫)、妻と子どもそれぞれが満たしていなければいけない要件があります。それぞれの立場で、遺族基礎年金をもらうために満たしていなければいけない要件をまとめると、以下のよう表になります。
死亡した被保険者の要件 |
死亡時に、1~3のいずれかに該当にていたこと
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妻の要件 |
夫の死亡時に、高校卒業(18歳到達年度末)前の子ども、あるいは20歳未満の障害状態(障害等級1級か2級)の子どもとがいること |
子どもの要件 |
父親の死亡時に、高校卒業(18歳到達年度末)前であるか、あるいは20歳未満の障害状態(障害等級1級か2級)であること |
母親が死亡した場合、子どもは遺族基礎年金をもらうことができる遺族になります。しかし、父親と一緒に生活し扶養されていると、遺族基礎年金をもらうことができません。つまり、遺族基礎年金は父か母と一緒に暮らしている子どもには支給されないことになっています。
遺族基礎年金の金額は、老齢基礎年金と違って、保険料を納付した月数や免除を受けた月数にかかわらず、妻が受け取る場合と子どもが受け取る場合によって以下の表のような金額になります。
妻が受け取る場合 | 1,020,000円+2人目以降の子どもの加算額※1 |
子どもが受け取る場合※2 | 792,100円+2人目以降の子どもの加算額※1 |
※1 子どもの加算額 2人目の子ども…227,900円 3人目以降の子ども…1人つき75,900円 |
※2 子ども1人分の年金額は上記の計算式で求めた年金額を子どもの人数で割った金額になる。 |
妻の遺族基礎年金は、妻が再婚したり、全ての子どもが高校を卒業(18歳の到達年度末)するともらえなくなります(障害のある子は20歳到達まで)。
子どもの遺族基礎年金は、高校を卒業(18歳到達年度末)したとき(障害のある子は20歳になったとき)や養子(子どもの祖父母を除く)になったり、結婚するともらえなくなります。
遺族基礎年金がもらえないけど…。妻の遺族保障~寡婦年金
遺族基礎年金をもらえる遺族の範囲は、「妻と子ども」に限定されているうえ、前述のようにそれぞれが満たさなければいけない要件があります。第1号被保険者であるフリーランスや自営業者は、遺族年金をもらえる遺族の範囲が限られているのです。
そこで、第1号被保険者には、遺族基礎年金以外にも国民年金の独自の給付として、2つの給付があります。
まず1つは、「寡婦年金」という年金です。夫に先立たれた妻に対する年金です。寡婦年金をもらうためにも、死亡した夫と妻がそれぞれ満たさなければいけない要件がいくつかあります。まず、夫の満たす要件は以下の2つです。
- 死亡した月の前月までに、第1号被保険者としての被保険者期間だけで老齢基礎年金の受給資格期間である25年以上(第1号被保険者としての保険料納付済期間+保険料免除期間≧25年)を満たしていた
- 老齢基礎年金または障害基礎年金をもらったことがない
- 夫によって生計を維持していた
- 夫との婚姻期間が10年以上続いていた(事実婚を含む)
- 65歳未満である
夫、妻が上記の要件を全て満たしているとき、妻に寡婦年金が支給されます。寡婦年金の支給額は、夫の死亡時の保険料納付済期間と保険料免除期間から計算した老齢基礎年金の金額の4分の3になります(100円未満は四捨五入)。
また、寡婦年金の支給期間は、夫の死亡時60歳未満であった妻は60歳から65歳まで、夫の死亡時60歳以上であった妻は夫の死亡時から65歳までとなります。65歳になり、妻自身の老齢基礎年金が支給されるようになると、寡婦年金は支給されません。もし、65歳前であっても、老齢基礎年金の支給を繰り上げた場合は65歳になったものとみなされて、寡婦年金が支給されなくなりますので、注意が必要です。
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