ドイツの公的年金制度
日本はドイツと最も早く社会保障協定を締結しています |
●年金制度の基本的なしくみ
ドイツの公的年金制度は、職業によって加入する制度が異なります。もっとも対象者が多いのは、2005年1月に組織が統合されスタートした一般年金保険で、被用者や芸術家、手工業者、独自の年金制度も持たない自営業者、公務員※のうち職員・労働者に該当する人は加入義務があります。農業従事者は農業老齢保障、医師や弁護士は自営業者相互扶助制度、鉱山労働者等は鉱山労働者年金保険、公務員のうち官吏は官吏恩給制度に加入義務があります。16歳以上の無職の人は、一般被用者年金に任意加入することができます。
※ドイツの公務員は、公権力の行使に関する職務を遂行する「官吏」と、公権力の行使にかかわらない職務を遂行する「職員・労働者」に区分されます。
それでは、対象者の最も多い一般被用者年金保険の保険料をみていきましょう。一般被用者年金保険の保険料は1ヵ月の収入に対して保険料率を乗じた金額になりますが、被用者は事業主と折半負担、被用者以外の加入者は全額自己負担になります。なお、被用者については1週間の労働時間が15時間以内の短時間労働者で、かつ、収入が一定額以下の場合は、被用者の負担が軽くなります。また、保険料収入の不足分は国庫負担で賄われ、給付費用の約30%が国庫負担となっています。
●年金支給のしくみ
一般被用者年金保険から支給される年金には、老齢年金のほかに障害年金と遺族年金がありますが、年金額の計算には「報酬ポイント」と「年金種別係数」を使用します。報酬ポイントとは、毎年被保険者個人の報酬を一般被用者年金保険の全被保険者の平均報酬で割ったもので、年金受給時にポイントを合計します。ポイントの合計に受給する年金の種類に応じた年金種別係数(老齢年金が1、遺族年金が0.55、障害年金が0.5)を掛け、さらに1ポイント当たりの単価を掛けて1ヵ月当たりの年金額を計算します。また、公務員で一般被用者年金保険に加入する職員・労働者の老齢年金には、官吏恩給制度との差額を解消するために付加年金が上乗せされます。
老齢年金の受給資格を満たすには、最低5年間の加入期間が必要です。年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、60歳から繰上げ受給することができます。なお、支給開始年齢は2012年から2029年にかけて段階的に67歳まで引き上げられる予定です。
ヨーロッパで生活する場合は?
今回はヨーロッパの公的年金制度のうち、スウェーデン・イギリス・ドイツの3カ国についてご案内しましたが、この3カ国のうちアメリカと同様に社会保障協定が締結されているのはイギリスとドイツです。スウェーデンは現在予備協定が進められている状態なので、まだ社会保障協定がありません。ヨーロッパではイギリス・ドイツ以外でもフランスやベルギーなど7カ国と社会保障協定が締結済みで、スウェーデンのように現在協定が進められている国もあります。社会保障協定が締結されると、滞在期間が短い場合は日本の年金制度のみに加入し、滞在する外国の年金制度には加入義務がなくなりますが、一定期間を超えて滞在する見込みの場合は反対に滞在国の年金制度に加入しなければなりません。
今回ご案内した3カ国のように年金制度は国ごとにそれぞれ特徴があります。滞在期間の長さによっては加入義務が生じる場合もあるので、日本の公的年金制度との違いや各国の特徴を理解しましょう。
※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
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