念頭においておこう!個人向け国債の信用リスク

2018年7月末に、日銀の黒田総裁が金利上昇を容認すると解釈できる発言をしたことを受け、長期金利は上昇の兆しを見せています。個人向け国債の金利も上昇し、9月発行(8月募集)の「変動10年」の金利は0.09%(税込)で、2年7カ月ぶりの高水準になりました。個人向け国債の魅力が高まりつつあります。

この記事では、個人向け国債で儲け損なわないための心得として、「選び方」「中途換金のルール」「金利動向に即した対応」の3つを解説します。
その前に知っておいてほしいのは、債券投資では発行元の信用度が重要だということです。個人向け国債の場合、発行元である日本政府の信用度について見極めなくてはなりません。日本が財政破綻して約束通りの金利や元本を支払えなくなる(デフォルト、債務不履行)というのは一大事。そうそう簡単に起きることではありませんが、資産運用の基本情報として「信用リスク」という言葉は頭に入れておきましょう。
※過去にはアルゼンチンなど外国の国債がデフォルトしたことがあります。
 
個人向け国債。いまならどのタイプを選ぶ?

個人向け国債。いまならどのタイプを選ぶ?

 

今なら変動金利型がおすすめ

個人向け国債には、金利が半年ごとに見直される「変動10年」と、満期まで金利が変わらない「固定5年」「固定3年」の3種類があり、それぞれ毎月発行されています。2018年8月発行分の金利は、変動10年は0.09%(税引き後は0.0717165%)、固定5年と3年は0.05%(税引き後は0.0398425%)です。100万円分買ったとして、受け取れる金額は398円または717円。小学生のおこづかいにもならないような金額です。それでも一般の定期預金金利に比べるとマシな金利です。

このような状況ではどのタイプを選べばよいのでしょうか。当面使わないお金を預けるのであれば「変動10年」がいいでしょう。購入時点でもっとも金利が高いだけでなく、今後、市場の金利が上昇した時に、変動10年の金利も上がっていくからです。一方の固定5年・3年は市場の金利上昇についていけず、儲け損なってしまいます。市場の金利が下がれば変動10年の金利も下がりますが、個人向け国債の金利は0.05%が下限と決められていますので、固定5年・3年より不利になることはありません。
 

個人向け国債の中途換金にはペナルティー

個人向け国債の中途換金にはペナルティーのようなものがかかることも、覚えておかなくてはなりません。その内容は「直近2回分の金利に相当する金額が、戻ってくるお金から差し引かれる」というものです。固定5年・3年はいつ換金しても差し引かれる金額は同じですが、変動10年は金利が高い時に換金するほど、差し引かれる金額も高くなります。

では、数年後にお金を使う予定がある場合を考えてみましょう。もしも変動10年の金利が固定5年・3年よりもだいぶ高いのであれば、中途換金時に高いペナルティーを払うことになったとしても変動10年を購入したほうが得になります。

2018年9月発行分について、「固定3年を買った場合と、変動10年を3年後に中途換金した場合(※)」で比較すると、「変動10年を3年度に中途換金」するほうが利益は多くなります。固定5年と、変動10年を5年後に中途換金する場合とで比べても同じ結果です。しかし、一カ月前の2018年8月発行分では、固定3年を購入したほうが得という試算結果でした。黒田総裁発言までは、金利上昇が見込めない状況で、変動10年と固定5年・3年に金利差が無かったのです。
※変動10年の金利が発行後すぐには下がらなかった場合。
 

金利天井圏での長期固定金利型への切り替えは重要!

お金の預け先を選ぶときの基本は、「低金利の時は、期間の短い固定金利型商品または変動金利型商品。そして金利が上昇して天井圏になったときに長期の固定金利型商品に切り換える」というのが基本です。特に高金利の状況での長期運用では(預け先によっては複利効果も加わって)、少しの金利差でも将来大きな受取額の差になります。

しかし、変動10年の場合、金利が高くなった時に中途換金するほどペナルティーの金額が大きくなります。「長い間、少しの利息しかもらってこなかったのに、中途換金に必要な費用は直前の最も高い利息相当分」ということになると、換金することに抵抗感が生まれます。どうしてもという理由でもなければ、途中で換金することができないのが一般的な心理ではないでしょうか。

儲け損なわないためには、ここで冷静に判断して行動することが大切です。中途換金のペナルティーが嫌だからと満期まで保有した場合、保有している間に金利が下降に転じて、満期が来たときには既に市中金利が低い水準になっているというケースも考えられます。高金利時に長期固定金利型商品に切り替えなかったことによって“儲けそこなう利息”は多額になるのです。

その一方で、超低金利の状況では、少しの金利の差に頭を悩ませ労力をかけて預け換えをしたとしても、受取額がびっくりするほど異なる!ということにはならないのも事実。預け換えのコスト(振込料・交通費など)で、わずかな利益が吹っ飛ぶこともあります。

ペナルティーを払ってでも固定金利商品に乗り換えたほうがメリットがあるかどうか……そこを理性的に判断して行動に移せるかが重要になるでしょう。
 
金利の動向を確認し、必要な行動をとりましょう

金利の動向を確認し、必要な行動をとりましょう

 

金利の見通しが外れることも想定する

資産運用において、選択はひとつである必要はありません。金利が上がるという見通しを立てて変動10年を買うと決めた場合でも、見通しが外れることも考慮して固定5年や3年も併せて買っておく、という買い方もあるでしょう。中途換金したほうがいいと判断した場合でも、半分だけ換金して残りは満期まで保有するという方法もあります。

大切なことは、将来起こりうるあらゆる事態を“想定し”それに対応できるような体制をあらかじめとっておくことです。どんな事態も想定済みであれば、混乱することなく、また当初の行動について後悔することもなく、対応することができるのです。

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