「春」から「夏」の株式本格投入の時期は分かりますか?
1990年代後半、株式の春夏秋冬をコンピューターで見極め、株式と債券の比率を自動的に変えていくというファンド(投資信託)がたくさん登場しました。当時、コンピューターの判断は「今は春なので、株式の組み入れ割合を高めよ」という指示だったので、どのファンドも株式の組み入れ上限まで株式の割合を高めていました。
90年代後半は、誰もが「もう金利は底打ち」「そろそろ株価は上昇する」と思いきや、金利も株価もどんどん下がりました。そうです。春から夏へと株価が本格上昇するという通常の動きではなく、春から夏が来ぬまま秋、冬へと移っていったのです。それほど日本経済が異常な状況だったともいえるのですが、その結果、この類のファンドの価格は下がり続けたのです。理論的な判断によって、株式のウエイトを増やしているのに、結果的には損失を拡大することになってしまったのです。株式のウエイトを高めよ!という指標がたくさん出ている中で、あなたは冷静に株式の保有比率を下げるという判断を下すことができますか?
金利や景気、株価の動きは後から見れば誰もが簡単に判断できますが、その時々の状況の中でいつも正確に判断することはたいへん難しいものです。
これまで何度も春から夏への移行に失敗。今度こそ本当の夏がやって来るのか?2005年末現在(短期金利:コールレート翌日物 株価:TOPIX(東証株価指数)) |
「冬」の債券組み入れ時は分かりやすく失敗のダメージも少ない
金利が高い時期には、迷わず長期債券を組み入れるとたいへん効率がよいのですが、「冬」(高金利から金利が下がり始める時期)は「夏」や「秋」に比べて案外分かりやすいものです。
また、債券や預貯金などの商品の場合には、組み入れ時期を間違えたとしても、利益が少なくなるだけで満期まで持てば(表面上は)損失が出ないため、金利水準に応じた預け入れを思い切って行なうことができます。さらに、商品の「預入れ期間の分散」を行なうことによって、資産全体ではある程度効率的な運用が行えます。
しかし、株式は保有比率の変更時期を間違うと大きな損失が発生するため、機動的にウエイトを変えることは難しいのです。
「勝つ運用」から「負けない運用」へ
春夏秋冬に応じた投資を正確に行なうことができれば、「勝つ運用」となりますが、正確にその判断をすることはたいへん難しいことです。「勝つ運用」を選択したがために、見込み違いで負けてしまう場合も多々あります。将来のことなど誰もわからないからです。そこで、「勝つ運用」ではなく「負けない運用」が今注目されています。負けない運用は別記事で…
*春夏秋冬の知識は運用を行う上では必須です。これを知った上で自分にとって適応した運用方法を捜していくことになります。
*当記事で利用したTOPIXは東京証券取引所が算出・公表する株価指数です。これは東証の知的財産であり、これらに関する権利は東証が所有しています。
/上野博美