人気の個人向け社債はすぐ売り切れる
時々、瞬間的に話題になる「社債」。なぜ瞬間的なのかというと、人気のある社債(金利が高い、個人が買いやすい)が発行されるのは不定期で、売り出し期間が数日から数週間程度と短く、あっという間に売り切れてしまうことも多いからです。情報をキャッチした時に出遅れないように、あらかじめ知識を入れ、証券会社に口座も作っておきましょう。この記事では、社債とは何か、個人向け社債とは何か、魅力、税金、買い方、リスクなど、社債の基本をご紹介します。またよく見かける「劣後債」「無担保社債」「早期償還条項付」「他社株転換条項付」の意味も解説します。
【目次】
1.社債とは
2.個人向け社債とは
3.社債で得られる2つの利益
4.社債の魅力とは
5.個人向け社債は、いくらから、どこで購入できる
6.社債を購入する予算が少ない場合の方法
7.社債に関する5つのリスク
8.劣後債とは
9.無担保社債とは
10.早期償還条項付と他社株転換条項付
社債って何?
企業が発行する債券を社債といいます。企業は社債を売って得たお金で事業を行い、償還日(満期)が来たら債券の持ち主にお金を返します。償還日が来るまでの間は、債券の持ち主に定期的に利子を払います。つまり社債は「わが社はあなたから○○円借りました。○年○月○日に返します。それまでの間、○%の利子を払います」という「借用証書」なのです(詳しくはこちらもご覧ください)。
企業は株式も発行しています。しかし株式にはお金を返す約束も利子の約束もありません。事業が成功したら高い配当が支払われますが、事業がうまくいかなければまったく支払われないこともあります。債券の場合は、事業が成功してもしなくても原則として当初の約束が守られます(経営悪化で約束が守られないこと(=債務不履行)もあります)。
個人向け社債とは
社債の多くは機関投資家(金融機関や投資信託運用会社など)向けに億単位で発行されます。これを一般の個人が買いやすいように、50万円、100万円といった単位で購入できるようにして売り出されるものが「個人向け社債」です。最近は1万円程度から買えるものもあります。社債で得られる2つの利益
社債から得られる利益は2種類あります。1つ目は定期的に支払われる「利子」です(税率20%で源泉徴収され、確定申告不要)。2つ目は「譲渡益・償還差益」、売却して得た利益と償還金を受け取って得た利益です(税率20%、確定申告が必要)。また「利子」も「譲渡益・償還差益」も、確定申告によって株式投資等の損失との「損益通算」が行えます。
社債の魅力は?
社債の魅力は「金利」です。新規に発行される社債の金利は、同じ時期の預金金利より高いのが基本です。なぜって、お得でなければ売れないからです。また、「株式に比べると安全性が高い」点も長所です。ただし個々の商品によって安全性に大きな差があります。(下記のリスクの項目を参照)。社債の値動きは株式ほどには大きくありませんので、大きな利益を目指したいなら社債よりも株式が適しています。しかし社債には、値下がりしても売らずに償還期日まで持っていれば額面金額が返ってくるという安心感があります。ざっくりいうと「社債は定期預金よりは金利が高いがリスクも高く、株式よりはリスクは低めだが利益も小さめ」という傾向があります。
個人向け社債は、いくらから、どこで購入できる?
いつどんな社債が売り出されているかは、証券会社のサイトでチェックします。すべての証券会社で同じ社債を扱っているわけではありませんので、複数の証券会社のサイトで調べることが必要です。近年人気の「ソフトバンク債」や「SBI債」はSBI証券、「マネックス債」はマネックス証券で扱っています。社債の多くは証券取引所に上場されていませんので、売買は、購入者(または売却者)と証券会社の間での「相対(あいたい)取引」で行われます。価格はその時点の世の中の金利などを勘案し、証券会社が提示します。
社債を購入する予算が少ないなら、投資信託を通す手も
投資信託を使えば、1万円程度の少額資金から、さまざまな債券へ同時に投資することができます。債券は、英語でBond(ボンド)ですので、「○○ボンド オープン」といった名前の投資信託を見たら、「主に債券に投資する投資信託」だと分かります。また「ソブリン(ボンド)」は、政府や政府関係機関などが発行している債券という意味です。新興国の債券に投資する投信は高金利ですが、ハイリスク・ハイリターンが原則ですから、よく考えてから購入して下さい。社債に関する5つのリスク
■信用リスク企業の財政が苦しくなって利子や償還金が約束通り支払われないリスクです。債券も「ハイリスク・ハイリターン」です。同時期に発行される、償還までの期間が同じくらい社債を比較してみてください。金利が飛びぬけて高い社債があったら、発行企業の資産状況や業績などを確認し、より慎重に判断することが必要です。
格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s)、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などによる、企業や債券の信用度格付けも参考になります。
■金利変動リスク(価格変動リスク)
債券の価格は、世の中の金利に影響されます。持っている社債の金利よりも、世の中の金利のほうが低くなれば、その社債は人気が出るので高く売れます。世の中の金利のほうが高くなれば、その社債は人気がなくなり安くしか売れません。
■流動性リスク
値下がりしすぎて売るに売れない場合や、企業の業績悪化で信用リスクが高まって証券会社が買い取ってくれない時など、売りたくても売れないリスクです。。
■為替リスク
外貨建てで購入した場合には、円に換える際に損失が発生する可能性があります。
■各商品の特性がもつリスク
個々の商品の仕組みがもつリスクもあります。下記の「劣後債」「早期償還条項付」などの説明もご覧ください。
「劣後債」ってなに?
発行企業の経営状況が苦しくなった時に、他の債券を優先して利子や償還金が支払われ、劣後債は後回しにされます。そのリスクがある分、当初の金利は高く設定されます。倒産の恐れがないと思われる企業の劣後債は、有利な商品といえます。「無担保社債」ってなに?
現在、発行されている債券の大半は無担保社債です。反対の「担保付社債」は、企業の財産(土地や設備、自社商品など様々)が担保になっているので、企業は財政が苦しくなった時にそれらをお金に換えて利子や償還金の支払いを行います。「無担保社債」にはそのような担保がない分、利子や償還金が支払われない(債務不履行)のリスクが高くなります。「早期償還条項付」「他社株転換条項付」ってどういう意味?
債券の基本的な形はシンプルですが、複雑な仕組みを持たせた債券もあります。債券の名前の後に「早期償還条項付」「他社株転換条項付」と書かれてる債券をよく見かけませんか。「早期償還条項付」は、あらかじめ決められた「対象株式(債券の発行企業とは別の企業の株式)」の株価が一定の価格を下回った場合、満期を待たずに早く償還されるという仕組みの債券です。本来受け取れるはずだった金利が、償還以降は受け取れません。
「他社株転換条項付」と書かれた債券は、「対象株式(債券の発行企業とは別の企業の株式)」の株価が一定の価格を下回った場合に、償還時に金銭ではなく対象株式が交付されます。受け取れる株数があらかじめ決まっているので、「株価×受け取った株数」が、債券購入時の投資金額を下回るという「元本割れ」の恐れがあります。
このような複雑な仕組みの債券は、当初予定されている金利が高いという特徴があります。しかしその分、リスクも高いので、しっかり理解してから購入してください。