仕事・給与/退職・失業後の保険・年金の手続き

雇用保険の失業給付!自己都合や解雇など退職理由でこんなに違う

退職する時に一番気になるのがお金のこと。雇用保険の基本手当(失業給付)を当てにしている人も多いと思います。失業給付は、「自己都合」「解雇」などといった退職理由で金額に差がでてきます。どのような時に給付が多くなるのでしょうか? またその申請方法は?

福一 由紀

執筆者:福一 由紀

ファイナンシャルプランナー / 仕事・給与ガイド

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雇用保険の失業給付金の額は「退職理由」に左右される

退職時にお金の面で心強いのが、雇用保険の基本手当(失業給付)です。「転職前にチェック!雇用保険の失業給付」でも紹介した通り、この基本手当は年齢や勤務期間、退職理由によって支給日数が変わります。
会社を辞める時、一番気になるのはお金。収入がゼロでもお金は必要

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安心して転職活動を行うためには、手当が少しでも長く支給されるとうれしいもの。支給日数を決める要因の中でも大きな影響があるのが「退職理由」です。では、この退職理由はどのような種類があって、それによって失業給付はどうやって決まるのでしょうか?
 

雇用保険の失業給付金は、在職中の賃金がベース

まずは、雇用保険の基本手当(失業給付)のおさらいからしておきましょう。一般的な基本手当が支給されるのは、以下の2つの要件が当てはまる人です。
 
  • 就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない「失業の状態」にあること
  • 離職の日以前2年間に、雇用保険に加入していた月(賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある)が通算して12カ月以上あること
    (期間の定めがある労働契約の期間が満了し契約更新がなかった人、病気や妊娠など正当な理由で離職した人、会社の倒産、解雇などで離職をした人は、離職の日以前1年間に6カ月以上の被保険者期間でOK)
 
では、実際にいくら支払われるかというと、1日当たりの支給金額(基本手当日額)は、在職中の賃金をもとに計算されます。また、年齢区分ごとに上限額が決められています。詳しくは、「転職前にチェック!雇用保険の失業給付」を参照してください。
 

給付日数のポイントは、「自己都合」や「解雇」などの退職理由

雇用保険の失業給付(基本手当)の給付日数表。90日から360日まで「自己都合」か「解雇」かなど条件によって支給日数が変わる  *1 受給資格に係る離職日が平成29年3月31日以前の場合の日数

雇用保険の失業給付(基本手当)の給付日数表。90日から360日まで「自己都合」か「解雇」かなど条件によって支給日数が変わる(*1)受給資格に係る離職日が平成29年3月31日以前の場合の日数

画像は、雇用保険の基本手当(失業給付)の給付日数の表です。

例えば、自己都合・定年退職などにより離職した一般離職者の支給日数は、年齢にかかわらず被保険者期間が1年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日となっています。

しかし、倒産・解雇などにより離職を余儀なくされた特定受給資格者になると、年齢によって支給日数が変わってきます。例えば、被保険者期間が5年以上10年未満の時、30歳未満だと120日、45歳未満で180日、60歳未満で240日となっており、自己都合で退職した時より全年齢層で優遇されています。また、年齢があがるにつれ、その優遇度はアップしており、一般離職者とかなりの差がでてきています。
 

給付制限の有無にも影響が

特定受給資格者は給付日数だけでなく、受給できるタイミングも自己都合などの一般離職者とは違います。求職の申し込みをした日から通算7日間が待期期間となり、その後に基本手当が支給されることになります。

正当な理由なく自己都合により退職した場合は、さらに給付制限があります。この給付制限、令和2年10月1日以前の退職の場合は3カ月間でした。令和2年10月1日以降の離職は、5年間のうち2回までは給付制限期間が2カ月となります(5年間のうち3回目以降の給付制限は3カ月となります)。

このように、一般離職者と特定受給資格者では支給日数に差があり、総支給額もかなり変わってきます。また受給できるタイミングも変わってきます。
 

倒産・解雇は失業給付の「特定受給資格者」に

では、特定受給資格者は、どのような人が該当するのでしょうか?

特定受給資格者の範囲は、
  • 倒産や事業所による大量雇用変動(1カ月に30人以上の離職など)
  • 事業所の廃止
  • 事業所の移転により通勤ができなくなった
といったケースが該当します。また、
  • 解雇(懲戒解雇などは除かれます)
  • 労働条件が著しく事実と違っていた
などの場合も当てはまります。

賃金が支払われなかったり(3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった)、引き下げられたり(85%未満に低下)した時も特定受給資格者となります。
 

特定受給資格者の対象は、長時間残業やセクハラでもOK

労働時間が異常に多いことが理由で離職した場合も、特定受給資格者の対象になります。具体的には、離職の直前6カ月間のうちに

・いずれか連続する3カ月で45時間
・いずれか1カ月で100時間
・いずれか連続する2カ月以上の期間の平均月80時間

を超える時間外労働
が行われたため離職した場合も該当します。

また、職種転換をした時に、会社側が必要な配慮を行わなかったことが理由でも該当します。

職場でのセクシュアルハラスメントや嫌がらせが理由で退職した場合も、会社がその事実を知っていながら、一定期間経過をしても会社が改善措置を行われていなかったのなら対象となる場合もあります。
 

特定受給資格者は、被保険者期間が半年でも受給可能

基本手当の受給資格は、離職前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上は必要です。ただし、特定受給資格者は、離職前1年間に通算6カ月の被保険者期間があれば受給資格を得ることができます。

他に、「特定理由離職者」に該当すれば、離職前1年間に6カ月の被保険者期間があれば受給資格を得る場合もあります。この特定理由離職者、どのような条件の人が認定されるのでしょうか?
 

雇止めで特定理由離職者に

期間の定めがある労働契約の期間が満了し、更新を希望したものの離職となった人は、特定理由離職者になります。派遣や契約社員などが雇止めにあった場合などですね。

この場合は、特定理由離職者として、倒産などで離職した特定受給資格者と同様の条件で失業手当を受給することができます(離職の日が平成21年3月31日から令和7年3月31日までに限る)。
 

妊娠、出産、育児でも特定理由離職者に

また、正当な理由で離職した人は特定理由離職者になれる場合があります。一般離職者であれば、被保険者期間が1年未満だと基本手当を受給することができないところ、正当な理由で離職した特定理由離職者であれば半年以上で受給できるということですね(被保険者期間が1年以上ある場合は、一般離職者の受給日数となります)。

特定理由離職者になれる正当な理由とは、どういうものでしょうか? 例えば、妊娠、出産、育児の場合ですね。この時は「受給期間延長」を受けなくてはいけません。失業給付は、働ける環境なのに就職できない時に支給されるものです。妊娠や出産、育児の時は、働ける状態になるまで給付を待ってもらわなくてはいけません。

雇用保険の受給期間は1年間(離職した日の翌日から)なのですが、働ける状態でなければ受給期間は延長しましょうというのが「受給期間延長」。受給期間は最長で4年間。この受給期間延長を受ければ、妊娠や出産でも特定理由離職者になれます。
 

結婚で引っ越しでも特定理由離職者の対象になる

通勤が難しくなり退職したという場合も、特定理由離職者になる正当な理由になります。例えば、結婚や、配偶者の転勤や転職で、引っ越しをして通勤ができなくなった場合です。

鉄道やバスなどが廃止されて通勤が困難になったという時もOK。退職の原因が自分の意思ではなく、仕方なく退職となったという場合は、正当な理由とされる可能性が高くなります。このように、正当な理由での離職はかなり広範囲にわたっています。
 

雇用保険の失業給付は、ハローワークでどれだけ説明できるかがポイント!

このように、雇用保険の基本手当(失業給付)の給付にあたって、特定受給資格者や特定理由離職者、一般離職者とでは支給日数や支給要件に大きな差があることがわかります。どれに認定されるかは、かなり大きなポイントですね。

ハローワークで基本手当の申請を行う際に、必要なのが「離職票」。この離職票は、退職後に会社から受け取ることになります。離職票を確認する時に、退職理由がきちんと記入されているかを確認しましょう。もし、実態と違う内容になっていれば、ハローワークで再度説明し認定してもらうことになります。

ハローワークで認定してもらうためには、長時間勤務や体調を壊したなどという理由で退職した場合は、仕事がどれだけハードだったか、実際の勤務時間がどれくらいだったかをきちんと説明することです。タイムカードや賃金台帳、給与明細などの資料も忘れずに持参しましょう。

セクハラなどが理由である場合は、客観的に証明できるものが必要です。会社や人事担当者、公共機関に相談に行ったことを説明できるようなものを準備しましょう。他の理由でも、それぞれの理由を証明する資料が必要になりますから、どのような資料を準備するのか事前に調べておくと安心ですね。

雇用保険の基本手当(失業給付)は、再就職の活動のためにとても重要な収入源です。自己都合とはいえ、やむを得ず退職した人は、特定受給資格者、または特定理由資格者になれるかもしれませんので、退職前にしっかりとチェックしてください。

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