「国の教育ローン」とは?
受験期を迎えてから、学費の準備で焦ることがないように、「国の教育ローン」の概要も頭に入れておきましょう。
「国の教育ローン」は、株式会社日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫、平成20年10月1日組織変更)のローンで、最低水準の金利で借りられる注目の教育ローン商品です。
「教育一般貸付」のほか、かつては「郵貯貸付」というものもありましたが、郵貯貸付は現在は募集していません。
「国の教育ローン(教育一般貸付)」の対象など
「教育一般貸付」は、所定の条件をクリアすれば利用できる教育ローンです。概要を整理します。<融資限度額(学生1人につき)>
350万円以内
(海外留学の場合は450万円)
<対象校>
・大学、大学院(法科大学院など専門職大学院を含む)、短期大学
・専修学校、各種学校、予備校、デザイン学校など
・高等学校、高等専門学校、特別支援学校の高等部
・外国の高等学校、短期大学、大学、大学院、語学学校など(原則6カ月以上の留学に限る)
・その他職業能力開発校などの教育施設
※学校によっては一定の要件を満たす必要がある
※義務教育期間中の費用は対象外
※外国の教育施設から条件付き(語学力の向上など)で入学が許可され、条件を満たすために修学する語学学校などの場合、修業年限3カ月以上の施設が対象
<年収上限(世帯年収)>
子1人・・・年収790万円(所得590万円)<1>
子2人・・・年収890万円(所得680万円)<2>
子3人・・・年収990万円(所得770万円)
子4人・・・年収1090万円(860万円)
子5人・・・年収1190万円(960万円)
<1><2>を超えても、年収990万円(所得770万円)以下で、なおかつ次項1~10のいずれかに該当すれば利用できます(注:審査によっては利用できない場合もあります)。
- 勤続(営業)年数が3年未満
- 居住年数が1年未満
- 世帯のいずれかの人が自宅外通学(予定)者
- 借入申込人またはその配偶者が単身赴任
- 使途が海外留学資金
- 返済負担率※が30%超
※借入申込人の「今後1年間の借入金返済額÷年収(所得)」 - 要介護(要支援)認定を受けている家族などがいて、介護費用を負担
- 大規模な災害により被災された方
「教育一般貸付」の概要
<使途>・学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など)
・受験にかかった費用(受験料、受験時の交通費・宿泊費など)
・在学のため必要となる住居費用(アパート・マンションの敷金・家賃など)
・教科書代、教材費、パソコン購入費、通学費用、修学旅行費用、学生の国民年金保険料など
※今後1年間に必要となる費用が融資対象。
※義務教育期間中の費用は対象とはならない。
※入学資金については、入学される月の翌月末まで融資可能。
<1回の借入>
1年間にかかる上記学費等。分割納付分でも一括で借りられる。
<返済期間>
15年以内
(交通遺児家庭、母子家庭、父子家庭、世帯年収(所得)200万円(122万円)以内または子ども3人以上*の世帯かつ世帯年収500万円(所得346万円)以内なら18年以内)
*世帯で扶養している子の数。年齢、就学の有無を問いません。
<保証>
連帯保証人1人以上または(公財)教育資金融資保証基金による保証(融資額や返済期間に応じた保証料がかかり、融資額から一括で差引かれる)が必要。
※交通遺児家庭、母子家庭、父子家庭の保証料は2/3に軽減
※連帯保証人による保証も可能
<元金据え置き>
在学中は元金据え置きで利息のみの返済とすることができます。(ただし、返済期間に含まれる)
<金利>
1.76%(固定金利、保証料別、2017年11月10日現在)
※母子家庭、父子家庭、世帯年収(所得)200万円(122万円)以内または子ども3人以上*の世帯かつ世帯年収500万円(所得346万円)の場合は1.36%(固定金利・保証料別)
*世帯で扶養している子の数。年齢、就学の有無を問いません。
<返済方法>
・毎月払い
・ボーナス併用払い
※在学期間中は利息のみの支払が可能(元金据置)
返済例
200万円を金利1.76%、返済期間15年で借り、大学4年間は元金を据え置いた場合(教育資金融資保証基金による保証を利用せず)、以下のようになります。- 元金据え置き期間の返済額:3000円
- その後の月返済額:1万6700円
- 返済総額:234万2100円
問い合わせ先
- 日本政策金融公庫 ネット申込コーナー
- 教育ローンコールセンター 0570-008656(ハローコール)
営業時間 月~金9:00~21:00、土9:00~17:00
借りる前に検討を
準備してきた教育資金で大学4年間まで回らないときには、奨学金や教育ローンを利用する方法があります。奨学金は原則子ども自身の借金ですが、教育ローンは親の借金です。親の立場からすると、教育ローンを借りることは老後資金を減らすことにもなるので、まずは奨学金から検討したいもの。子ども自身が返済する形で奨学金を借りてもらえれば、老後への影響はなくて済みます。万一、親の老後に影響が出た場合には、結果的に子どもに負担が行くことにもなるので注意。子ども自身も、一部は自分のお金で学ぶことで、自覚を持って学ぶことができるでしょう。
奨学金が年収制限で利用できなかったり、あるいは入学金や学費等まとまった資金が不足する場合などは、時期的にも間に合いません。そんなときは、「国の教育ローン」などの教育ローンを利用せざるを得ない場合もあるでしょう。ただし、「国の教育ローン」にも所得制限があり、しかも夫婦の収入合算である点は注意してください。
他の教育ローンとも比較を
「国の教育ローン」を利用できる場合でも、念のため、民間の教育ローンもチェックしてみましょう。シーズンには多くの金融機関が教育ローンに力を入れ、金利を優遇するキャンペーンなどを行うことがあります。【参照】民間教育ローン選びのポイント
特に大事なことは、教育ローン商品を比較する際に、金利だけでなく、保証料なども含めた総返済額を試算して比較することです。「実質金利」が表示されている場合は、そうしたコストも金利換算されています。また、返済期間が5年を超える中長期の場合は、固定金利の教育ローンを選んだほうが安心でしょう。
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